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あ「あー、えっと…勝利、ちょっと先に行ってくれないかなー…なんて…」
勝「なんで?」
あ「えーっと…だから、それは…。あっ、そうそう!忘れ物っ…したような気がしたりして…!」
我ながら、苦しい言い訳。
でも、どうしたって勝利に会わせたくないんだよ。
勝「…なに忘れたのか知らないけど、もう諦めろ。取りに帰っても、遅刻するだけだ」
そう言って勝利は
私の手を取って歩き出した。
…どうか、私に気付きませんようにっ!
なるべく下を向いて勝利に隠れるようにして
校門に近付いていく。
あと5メートル…3メートル…
横を通り過ぎて、ほっとしたのも束の間
風「…なに無視してんだよ」
低い声が背後から突き刺さる。
勝「…はぁ?」
勝利が振り返るけど…
私には振り返る勇気なんてない。
勝「…なんすか、あんた」
勝利が風磨を睨んでるのが、雰囲気で分かる。
もう一刻でも早く逃げ出したくて仕方ない。
風「…お前じゃねぇよ。お前の後ろでこっち向こうとしねぇヤツに用があるんだよ」
風磨がため息まじりにそう言うと
勝利が驚いたように私を見る。
あ「…なんでいるのよ」
仕方なしに振り向いて、風磨を睨む。
風「…ん」
差し出された風磨の手にあるのは
見慣れた英語の教科書。
あ「…あーっ!どこにやっちゃったのかと思ってたら、あなたのところだったの?」
風「お前が忘れていったのを、わざわざ届けに来てやったんだからな?」
あ「うん!ありがとう!」
笑ってお礼を言う私の頭を
風磨は、ぽんぽんと撫でる。
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作者名:北斗七星 | 作成日時:2015年6月23日 0時