【続】愛の香り。Fuma.K -3-

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あの頃の記憶はどうしたって曖昧で、思い出すことなんて出来ない。




ただ、風さんという存在があったこと。



「一緒に生きよう」って、約束したこと。




それぐらいしか覚えていない。





いつ出会ったのか。


何を話したのか。


どんな顔だったのか。


どんな声だったのか。



…名前ですら、分からない。




名前も歳も、もしかしたら住んでいるところも、尋ねたことがあったのかもしれないけど。



私はそれを覚えていない。




“風さん”という呼び方ですら、私が勝手にそう読んでいただけに思う。





………風みたいな人だった。



風みたいに、蒼くて掴めない人だった。



……澄んだ、瞳をしていたように思う。







記憶にも残らない、思い出の中の人。



でも、私の支えになっている。




もし、もう一度だけでも会えるなら…



きっと、あの時と同じように、私に光をくれるはず。


闇に負けないで、光の中を歩く勇気をくれるはず。




……そしたらきっと、悲しみを抱く今の私にも、なにか希望が見えるはず。




…だから、会いたい。






そして、彼に会わせてくれるのは健人しかいない。



手がかりは、健人しかいない。



聡が教えてくれないのなら、健人しかいないの。




だから、たとえこれが…



健人の言うことが


これから健人が私を連れて行ってくれる場所が



罠だったとしても。



“復讐”の一環だったとしても、全然かまわない。




もしそうだったとしたら、それはただ、私が賭けに負けただけのこと。






健人の言う“復讐”に、負けただけのことだ。





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