【続】愛の香り。Fuma.K -3-

＊99＊ ページ19

健人side





1月の下旬。




俺の中に最初の狂気と言える感情が芽生えたのは、もしかしたらこの時だったのかもしれない。



それまでは、仕方のないことだと、誰も恨むことなくやってきたのに。







………沖縄での夜のことだった。



真っ暗で、星の光が散りばめられた夜だった。




ふいに、風磨の携帯が鳴る。



画面に表示されているのであろう名前を見て、風磨は思い切り嫌そうな顔をした。



小さく舌打ちをして、そっと席を立つ。




少し離れたところで携帯に出るあいつを見て、俺は悟る。




……多分、例の桐生のご令嬢からなんだろう。



きっと風磨にとって、桐生の子は清香との仲を無理やりに壊した人間、ぐらいの認識しかないんだろうな。





………可哀想に。



無理やりな政略結婚だなんて、あっちの子にとっても同じだろうに。







…そんなことを考える俺と同じように、風磨の電話の相手を悟ったらしい清香は、そっと席を立った。



そして、電話中の風磨に話しかけている。




………分からないでもない。



清香の気持ちも、理解はできる。



少しぐらいの意地悪はいいんじゃないだろうか。




桐生のこの存在を忘れていられるこの旅行中ぐらい


あの子じゃなくて自分が、風磨の近くにいたい。



だから、電話でさえも、少しぐらいの邪魔は、いいんじゃないだろうか…。







……だけどそれは、清香に自覚はなくとも俺は傷付く。



俺が帰国している、この少しの間ぐらい、俺を見てくれてもいいんじゃないだろうか。





………あぁ、まったく。



悪循環だな。




ぐるぐると、不幸の連鎖のように。



誰にも届かない気がする。





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