愛の香り。Fuma.K -4- (ページ37)

今日:37 hit、昨日:12 hit、合計:841,460 hit

＊157＊ページ37

＊

「…前に見かけた時も、泣きそうだったね。次は笑った顔を見せてくれ」

彼は、それだけ言い残して去っていく。

その先には、車が停まっていた。

…私、あんな人に会ったことあったっけ？

そうは思ったけど、あの人には不審な点がそれ以外にもある。

どうして、私に帰る場所がないことを知ってたの？

“前”っていつ…？

“次”って…？

また会うことがあるの…？

その間にも、時間は流れていく。

とりあえず、怪しみながらも彼の厚意に甘えることにした。

メモに書かれた、ホテルの名前と簡潔な地図。

そして、英語で書かれた彼のサイン…。

ホテルにたどり着いた私を

フロントにいる受付の人は明らかに不審がってた。

まぁ、当たり前といえば当たり前なんだけど。

私、明らかに未成年だし、こんな時間だし。

私が彼に貰ったメモを見せると

焦ったように態度を改めてきた。

…このホテルのオーナーって話、本当だったんだ…。

そして、無駄に広い1番いい部屋に案内され

疲れていた私は、すぐに夢の中へと落ちていった。

自分で思っていたよりもずっと疲れていたらしく

あの夢を見ることもなく深い眠りだった。

翌朝、目が覚めた私は、いつもの癖で携帯を確認する。

何件も何件も、メールと着信が梓と勝利から。

そして…風磨からも。

でも、私は返事する気にならなくて、それを閉じた。

とりあえず梓に「大丈夫だから」とだけ送り

そのままホテルを後にする。

フロントでお金を払おうとしたら

丁重にお断りされてしまった。

＊