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タクシーを降りた私は、重い足を前へと進める。


未だ左薬指に光る冷たい指輪をぎゅっと握って、気持ちを固めた。



最後にしなくちゃいけないこと。


それはきっと、心の傷を広げることになる。


でも、やらなくちゃ。



そう思って、震える指でチャイムを鳴らした。



中から慌ただしい音が近付いてきて、ドアが開いた。



風「…どこ行ってたんだよ!?」



目の前のその人は、声に怒りを含めて私を見据える。



あ「…別に。外の空気吸ってただけ」



視線をそらしてそれだけ言うと、相手はほっと息を吐いた。



風「…ほら、夜は冷えるから。さっさと入れ」



そう言って、私を中へと促す。


いつもと変わらない彼の態度に


まだ連絡がきてないのだと確信する。



目の前のこの人と、私の間に


もう“義務”という鎖なんてないのだということを


まだ、知らないんだ。



風「…(人1)?何してんだよ?」



風磨は、玄関に立ったまま動こうとしない私に


戸惑い気味に声をかけた。



…きっと、名前を呼んでくれるのもこれが最後。



どうか、お願いだから…


私の最後の強がりに気付かないでね。





あ「これ、返す」



私が手を差し出すと、風磨は怪訝そうな顔をしながらもそれを受け取った。



そしてそれが何か確認すると、驚きの目を私に向けた。



風「…どういうことだよ?」





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作者名:北斗七星 | 作成日時:2015年7月24日 1時

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