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風磨のマンションを出て、タクシーに乗り込んだ。



桐生に向かう間に、梓に電話をかけた。



あ「…梓?」


梓『(人1)?どうしたの?』



いつもと変わらない梓の声に、どこか安心する自分がいる。



あ「…今日、そっちに帰っていい?」



それだけ言うと、梓は『分かった』とだけ答えてくれた。


何も聞かないでいてくれる梓の優しさ。



…大丈夫。


そう自分に言い聞かせて、まだ痛む胸をそっと押さえた。





これから先がどうなるかなんて分からない。



でも、私は…全てをゼロに戻しに行かなければならない。







桐生に着くと、使用人の人たちと一緒に聡が私を出迎えてくれた。



聡「…姉さん」



聡は何か言いたそうに口を開いたけど、私はそれを遮った。



あ「父さんたちは?」



…聞きたくないの。


慰めも、同情もいらない。


揺らいでしまうから…かき乱さないで。





聡は一瞬悲しそうに私を見て、長い廊下を先に立って歩き出した。



私は、それに黙って付いて行く。



暫く歩くと、聡が立ち止まった。



聡「…ここにいるから」



そう言って、ドアノブに手をかけ、そっと開いた。





強く目をつぶり、一度大きく深呼吸をして部屋へと入った。


無駄としかいいようがないほどの部屋に


これまた無駄に大きく長いテーブルが置いてある。



「…話とは?」



テーブルの向こう側に、父と母が並んで座っている。


声は届く距離なのに、どうしても遠く感じてしまうんだ。



それは、やっぱり心の距離なんだろうか。



あ「…菊池との婚約についてです。本当に勝手な話なのですけど、破棄にしてもらえませんか?」





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作者名:北斗七星 | 作成日時:2015年7月24日 1時

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