愛の香り。Fuma.K -4- (ページ21)

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それが誰なのか分かってるから

玄関へ向かう足も重く感じる。

ドアノブに手をかけたけど

それは、なかなか動いてくれない。

…大きく息を吸って、それを止めたまま

ドアチェーンを外して、ドアを開けた。

＿＿＿…ほら、ね。

予想通りの人が、そこにはいた。

お互いに視線を絡ませたまま、微動だにしない。

「こん…ばんは」

震えた声で、その人は沈黙を破った。

あ「…こんばんは」

…心臓が潰されたように痛い。

…何しに来たの？

＿＿＿清香さん…。

清「あの…ふ「…っ清香！！」

恐らく「風磨は？」と続くはずだった彼女の言葉を遮ったのは

他でもない、風磨だった。

清「…風磨…っ」

清香さんは一歩進んで、私の前に立った。

彼女の肩越しにちらりと見える彼の表情は

今まで見たことがないような…

いろんな感情が混じり合ったものだった…。

私は、ただ2人を見ていたんだ。

ズキズキと痛む心臓を押さえながら

ただ見ているしか出来なかった。

風「…親父から、今電話で聞いた」

清「…風磨」

風「俺が何とかするから」

清「…風磨、聞いて？」

風「…(人1)、悪いけど席外して」

彼は私を見ずに、そう言った。

私は重い足をなんとか動かして

リビングの廊下へと続くドアに手をかけた。

その時、「あっ」という声とともに

カツン、と音がして…足元に何かが転がってきた。

ふいに、それに目を向ける。

…見覚えのある、ピンクゴールドの指輪。

これ、確か清香さんがはめていたものだ。

＊