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あ「…お帰りなさいっ!」



そう言うと、風磨は少し疲れた様子で「ただいま」と微笑んだ。



あ「朝ご飯は?…食べる?」


風「あー…食う。めちゃくちゃ腹減った」


あ「今すぐ作るから待っててね!」



急いでキッチンへ向かう。


予約しておいたご飯が炊けてるのを確認して


冷蔵庫から材料を取り出す。



風磨をちらりと見ると


ソファーに座って朝のニュースを見ていた。



…その後姿が、愛しくて愛しくて…


そして悔しくてたまらない。





生まれだした感情を奥底に押し込めると


戸棚から包丁を取り出す。



そこで、ぴたりと動きを止めた。



…左手に握る包丁。


右手首には、あの傷がちらりと見える…。





風「…お前がさ」



風磨が突然声を出すものだから、体がびくっと跳ねた。



あ「えっ…なに?」


風「DVD見ながら寝た時あっただろ、ここで」



風磨はこちらを振り返り、ソファーを指さしてみせる。



…多分、このマンションで初めて眠ってしまった時だ。



それで、あの夢を見たんだ。


でもそれは、途中で温かな夢に変わった…。





風「お前がすっげぇ声で叫ぶから、何度か声かけて起こそうとしたんだよ。そしたら、『勝利』って口に出しやがった」


あ「だから勝利のこと知ってたの!?」


風「…名前だけな。なんかすっげぇムカついた、こいつ も 男いたんじゃねぇかって思ったな」



風磨は軽く笑い、「飯まだ?」と言ってキッチンにやってきた。







…知らないでしょ?



分かってないでしょ?



あなたの言葉に、あなたの前で


私がもう、仮面しかかぶれなくなってることを。





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作者名:北斗七星 | 作成日時:2015年7月24日 1時

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