愛の香り。Fuma.K -4- (ページ16)

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………届かない。

声も気持ちも、何もかも、もう届かない。

風磨は、一度も私を見なかった。

こちらを振り返りはしたけど

その視線は一度も私に向けられなかった。

＿＿＿…後で知って傷付くなら、今知っておいた方がいいと思って…＿＿＿

聡の言葉が頭をよぎる。

風磨が誰かと沖縄に行っていたあの日。

勝利の優勝祝いパーティーだったあの日。

聡から電話がかかってきた、あの日の言葉が

容赦なく押し寄せてきた。

＿＿＿姉さんの婚約者、恋人がいたらしいんだ。

菊池系列の会社の社長の娘で、姉さんの話がなければ
きっと彼らが婚約してた。

風磨くんは菊池会長にずっと『婚約なんかしない』って言ってたよ。

…でも姉さんの話がいった時、ちょうど彼女の会社が
菊池から切り捨てられる寸前だった。

風磨くんは、会長と契約を交わしたんだ。

“桐生”と婚約する代わりに
彼女の会社を切り捨てないって。

…姉さん、それでも俺は味方だから。

姉さんのために、出来ることをしようと思う。＿＿＿

………そうだ。

聡は、そう言っていた。

そしてきっと、その“恋人”が“清香”さんなんだ。

本当はずっと、それに気付いていたけど

考えないようにしてた。

逃げていた、だけだった…。

…思えば、あの後風磨の態度が急変したんだ。

妙に優しくなって、甘くなった。

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