＊121＊ ページ1
＊
あ「…『どうして何も言わないの？』」
私のその言葉に、風磨がピクリと肩を揺らした。
あ「…『どうして、抵抗しないの？私との婚約なんて、どうにでも抗えるんじゃないの？…あなたは私じゃないでしょ？』」
あの時と同じ言葉。
初めて風磨のマンションに行ったあの日。
…あの時、踏み込めなくて聞けなかったことがある。
あ「…『あなたは、何を守りたいの？』」
少しの沈黙の後、ようやく風磨が口を開いた。
風「…お前、俺の名前呼んだことないよな」
ぎくりとした。
心を見透かされてるみたいで、体が強張ってしまう。
自分の中では何度だって風磨の名前を呼んできたけど、口に出したことはない。
口に出してしまえば、もう後戻りできない気がするから。
もう一度、強く目を閉じた。
…流されるな、私。
まだ賭けは終わってないんだから。
風「…(人1)。手首切ったのは、一度だけ？」
私が何か言うより早く、風磨が口を開いた。
あ「…うん」
風「どうして？」
あ「記憶は曖昧だけど、入院してた病院で約束したから。顔も名前も覚えてないけど、誰かと『一緒に生きていこう』って」
風「…そっか」
何でそんなことを聞いたのか
この時の私にはよく分からなかったけど
風磨が穏やかに微笑むから、それでも良かった。
あ「…私、きっと誰も愛せない」
打ち寄せる波を足元に感じながら、重い口を開いた。
あ「誰にも愛されない。…“愛”なんて知らない。周りにあるのは、いつだって“義務”ばっかり」
足元に落としていた視線を、風磨へと向けた。
…これは、賭けだ。
これで風磨が離れていってしまうなら、私の負け。
もし逆なら…？
＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1452人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：北斗七星 | 作成日時：2015年7月24日 1時
