愛の香り。Fuma.K -3- (ページ24)

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だって、それは…

はるちゃんが言ったのと同じ言葉だったから。

この短い間に、私は大切なものを2つもなくしてしまった。

体の奥から何かがこみ上げてきて

でも、それを我慢してぐっと耐えた。

それなのに、ぽたりと…耐え切れずに落ちた滴。

気付いた私は、急いで袖で拭った。

…だって、泣きたいのは私じゃない。

その時、聞こえてきたクミおばさんの言葉に

私は…とうとう耐えることが出来なくなった。

「…梓？(人1)ちゃんは、結局この家の子じゃないんやから」

今まで堪えていたものが、一気に溢れるのが分かった。

これでもかというほどの足音を響かせて

後ろで焦りながら私の名前を呼ぶのが聞こえたけど

玄関を飛び出して必死に走った。

涙が溢れて、前が見えない。

喉が焼けるように痛くて、声が出せない。

さらに全力疾走してるせいで、苦しくて苦しくて仕方がない。

すれ違う人は何事かという目で私を振り返ったけど

そんなのは気にならなかった。

とにかく走った。

私の、本当の居場所だと思ってた場所へ

ただ、ひたすら走ったの。

当時、月に1回だけ“そこ”に行ってたから

場所ぐらい把握している。

でも、アポなしで行くのなんて初めてで

別にアポなんて要らないんだって思ってたから

気にもしてなかった。

…だって、そうでしょ？

私は、本当は“桐生”(人1)なんだから。

＊