愛の香り。Fuma.K -3- (ページ17)

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あ「…ごめんなさい」

小さく謝る私を

風磨は、ただただ見据えていた。

その眼差しは、さっきまでの優しさなんて

ひとかけらも含んでいない。

どこまでも冷たい眼差しが

私を貫くようだった。

あ「…ごめんなさい……っごめん…ごめんなさい…」

記憶が、頭の中で再生される。

自分が“要らない”存在なんだと知った、あの時

“邪魔な”存在なんだと知った、あの時

“いなくなればいい”存在なんだと分かった。

だったら、みんなの望み通りに“いなくなればいい”。

私なんか“死んでしまえばいい”。

幾重にも重なった、あの時の偶然は

私を“死”へと誘った。

…絶望は、どうしてこんなに重なってやってくるのだろう。

もしもそれが、全く違うタイミングであったなら

きっと、こんな傷を負うこともなかっただろうに。

あ「…婚約…破棄でかまわないから」

風「…は？」

静かにそう言った私の言葉に

風磨の怒りを含んだ声が答えた。

あ「…こんな…“キズモノ”が婚約者なんかじゃ赤っ恥じゃん…っ！」

喉の奥が、熱くて痛い。

息が詰まる感覚が襲ってくる。

目の奥が熱くなって、心臓がぎゅぅってなる。

ぼやけてくる視界を遮るように

私は、俯いたまま強く目をつぶった。

…泣いちゃダメ。

そんなの、絶対にダメ。

他人に弱さを晒せば、その分自分が弱くなる。

…だから、ダメ。

風「お前は、それでいいんだな？」

抑揚のない風磨の声が、頭上に響く。

…いいわけない。

でも、同情なんかで風磨を縛りたくない。

…好き。

好き、好き、好き…大好き。

だから…

俯いたまま、小さく頷いた。

＊