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一年ぶりに中田家に足を踏み入れれば、いつものように大将のお母さんが優しく迎えてくれる。
台所の方から美味しそうな匂いが漂ってくる。
今日は鍋のようだ。
ちらっと台所を覗けばそこにはエプロン姿のAちゃんがいた。
今日伝えると意気込んでいたこともあってか、Aちゃんの姿を見ただけでなんかドキドキして、声かけられなかった。なんて情けない……
選手達が座ったところで、拳士さんによる乾杯の音頭。思ったより真面目にやりやがって、滑らしたろ、と全員が思ってただろうにこれじゃ肩透かしをくらった気分だ。
ある程度、お酒やご飯が進んだ頃。
「おおたにくん、かくれんぼしよー!」
大将の娘さんと翔平が部屋を出てった。
何人かの選手は面白がってそれについて行って。
部屋を出ていく翔平が、一瞬俺に目配せしたのは気のせいだろうか…
これで部屋から出ても怪しまれない雰囲気が出来上がった。
Aちゃんは台所で洗い物をしてる。
俺はお茶のおかわりを取りに行くふりをして、台所へと向かった。
「Aちゃん、ちょっとええ?」
「遥輝さん?どうしたんですか?」
「あんな、俺……日本一になったら……」
言え、言うんだ西川遥輝。
今こそ男を見せる時…!!
「日本一になったら、Aちゃんに伝えたいことがあんねん。
やから…絶対日本一になるから…その…えーっと」
こういう時、スパーンとかっこよく決めれたらいいのに。緊張のせいで言葉がうまく出てこない。
あぁ、かっこわるい、俺。
「…じゃあお菓子、作って待ってます。
マカロン、好きですか?」
本当はマカロンなんてあんまり食べたことないし、好きとかキライとかないんだけど、俺はただ頷くしかできなかった。
ていうか、Aちゃんが作るお菓子ならきっとなんだって美味しいから問題ない。
「遥輝さんは有言実行してくれますからね、これで日本一はファイターズに決まりですね!」
目の前で満面の笑みでそんな事言われたら、もともと負ける気なんてサラサラないけど、絶対勝つぞって気持ちが大きくなる。
「…見に来てくれるんやっけ?」
「はい!有給使っちゃいました!初戦から最終戦まで全部見に行きます!」
「北海道寒いから、あったかい格好してくるんやで?」
「はーい」
鼻歌を歌いながら洗い物をする彼女を横目に、冷蔵庫からお茶を取り出して、そのままリビングへ戻る。
心なしかみんなが俺を見てニヤニヤしている気がした。
ラッキー食べ物
すし
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紫椏(プロフ) - せーらさん» お読みいただきありがとうございました!面白かったと言ってもらえて本当に嬉しいです。データが飛んでも書き続けてよかった…! (2017年2月20日 21時) (レス) id: b888682380 (このIDを非表示/違反報告)
せーら(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すっごく面白かったです!!! (2017年2月20日 9時) (レス) id: 8c3fdebe22 (このIDを非表示/違反報告)
紫椏(プロフ) - えりさん» コメありがとうございます!有原くんがこんなにかっこよくなるとは作者も思いませんでした(笑) (2017年2月16日 16時) (レス) id: b888682380 (このIDを非表示/違反報告)
えり - 主役遥輝なんだけど有原さんかっこいいです(*^^*)初コメ失礼しました。 (2017年2月16日 16時) (レス) id: 4c6f302957 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫椏 | 作成日時:2016年11月27日 10時