30 ページ32
それでも、走ることだけはやめなかった。
Aちゃんに「遥輝さんらしくない」と言われてから、俺らしさって何だろうって色々考えた結果。
Aちゃんが言う俺らしい姿っていうのは、走ることなんじゃないかって思って。
塁に出る、盗塁でチャンスメイクする
とにかく脚で稼ぐこと。
守備も攻撃も、俺の持ち味はやっぱり脚だって。
盗塁王も取れる位置にいる。
盗塁王取れば、あのミス達はチャラにならないだろうか、なんて考えたりもした。
けれど、そんな甘い考えはすぐにへし折られた。
9月13日、二軍降格。
この時期に?
盗塁王がかかってるのに?
嘘やろ、って。
だけど拒否権なんかもちろんなくて。
俺は大人しく鎌ケ谷に向かうしかなくて。
あーあ、なにやってんだか。
なっさけな。
鎌ケ谷の練習場でバット振りながら上の空。
こんなに身の入らない練習初めてだ。
そんな日々が数日続いて。
ある日寮に戻ってスマホを見たら、メールが1件届いてた。
どうせなんかのメルマガだろうと、送信者の名前も見ずにメールを開いた。
「遥輝さん、お久しぶりです。
私は今、鎌ケ谷にきています。
時間があればで構いません。
20時に◯◯公園に来てください。
あ、グローブ持って来てくださいね。」
慌てて送信者の名前を見れば、Aちゃんで。
時計を見れば、20時なんてとっくに過ぎてて。
慌てて支度して、グローブ引っ掴んで、寮を飛び出した。
◯◯公園って、寮から割と近くにある少し広い公園だ。なんでそんな所にAちゃんがいるんだ?
頭の中は疑問符だらけ。
それでも、会いたい気持ちが勝って、全速力で走った。
公園について、呼吸を整えていたら
ブランコが「キィ」と音を立てて揺れているのがわかった。
「Aちゃん…?」
「! あ、遥輝さん…」
来ないかと思った、とAちゃんは笑った。
そりゃそうだ、時刻は指定された20時を大幅にすぎて22時近いし、連絡の1本も入れなかったのだから。
「あ、ごめ」
「謝らないでください。突然来たのは私だし。」
「…なんでこんなとこにおんの?」
そう尋ねれば、Aちゃんは1度大きく呼吸をして、いつも以上にまっすぐ俺の目を見た。
「約束を、果たしに来ました。」
「…え?」
「遥輝さん。キャッチボール、しましょう」
予想外すぎる答えに、俺は何も言えなくなった。
ラッキー食べ物
すし
308人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「プロ野球」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫椏(プロフ) - せーらさん» お読みいただきありがとうございました!面白かったと言ってもらえて本当に嬉しいです。データが飛んでも書き続けてよかった…! (2017年2月20日 21時) (レス) id: b888682380 (このIDを非表示/違反報告)
せーら(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すっごく面白かったです!!! (2017年2月20日 9時) (レス) id: 8c3fdebe22 (このIDを非表示/違反報告)
紫椏(プロフ) - えりさん» コメありがとうございます!有原くんがこんなにかっこよくなるとは作者も思いませんでした(笑) (2017年2月16日 16時) (レス) id: b888682380 (このIDを非表示/違反報告)
えり - 主役遥輝なんだけど有原さんかっこいいです(*^^*)初コメ失礼しました。 (2017年2月16日 16時) (レス) id: 4c6f302957 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紫椏 | 作成日時:2016年11月27日 10時