3年目の決意

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どうしよう。

打ってしまった。

いや、良いんだけど。
むしろ打たなきゃいけなかったんだけど。



まさか本当にホームランって。


これもAちゃんのパウンドケーキ効果？
食べたら打てる気がするとは言ったけど。
Aちゃんも願ってくれるとは言ってたけど。

どんだけ効果絶大なの。びっくり。


スタッフの人に今のホームランボールを探してほしい、って伝えれば快く了承してくれた。

ホームランボールを渡すって約束したから。

渡したらどんな顔するかな？

驚く？笑う？
｢Aちゃんのおかげやで｣なんて言葉をかけたら照れたりするかな？

まだ２回しか会ってないはずなのに、脳内のAちゃんはくるくる表情を変えていく。

あーーー、かわいい。


｢卓さん、見て。遥輝さんめっちゃニヤけてる…｣
｢慎吾、見るなって。変態が伝染るぞ。｣
｢ウィッス｣


ベンチでめっちゃ避けられた。特に卓さんと慎吾に。なんでや。


試合は結局雨のせいで途中で終わるし、しかも負けた。なんだかなあ。

ホームランボールは試合後に手元に届いた。
Aちゃんが打たせてくれた、Aちゃんのために打ったホームラン。

サインと、｢Aちゃんのおかげやで！｣とメッセージも入れた。

反応が楽しみだなあ。


｢え、なに。遥輝めっちゃ顔緩んでる…｣
｢Aのことでも考えとるんやろ、ほっとけ｣
｢ウィッス｣


大将と拳士さんの俺を見る目がなんとなく優しかった。なんでや。


試合が早く終わったぶん、ホテルに帰る時間も早まる。つまり、自由な時間が少しだけ増える。


｢なー、大将？Aちゃんの働いてる店ってホテルから近い？｣

｢駅前やから、ホテルからなら歩いても15分くらいやな｣


めっちゃ近いやん！行けるやん！！


｢まじっすか！会いに行きたいんすよ、ついてきてください！｣

｢一人で行けや｣


バッサリ却下されてしまった。
せっかく、サプライズで会いに行ってホームランボールを渡すっていう劇的ロマンチックな流れを考えていたのに。残念だ。

案内なしに知らない街を歩くのはなかなか不安だ。仕方ないのでAちゃんに連絡を取った。


｢To:Aちゃん
subject:有言実行

ホームランボール渡したいんやけど
どっかでちょっと会えへん？｣

｢From:Aちゃん
subject:Re:有言実行

打ったんですか！？すごい！
さすが遥輝さんですね！
21時頃でもよければホテルに伺います。｣


ただ会えるのがこんなに楽しみだなんて子供みたいだ。

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