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『ガチャ・・・・・・ゴト・・・ゴト・・・』
藤 「・・・」
飛び出した部屋は帰ってきても勿論そのままで、
脱ぎ捨てた服に、ソファーに彼が使っていた毛布。
藤 「・・・ッ」
『クシャ・・・』
唯一、綺麗に折り畳まれていた彼の手紙だけが、
俺の手の中でグシャグシャになっていた。
『クシャ・・・ッ・・・』
何とも言えない感情。
苛立ちなのか後悔なのか・・・。
藤 「・・・ーッ」
そんな何とも言えない感情は、
既に握り潰してる手紙を更に強く強く握らせた。
藤 「・・・」
そこからどれだけ時間が経っただろう。
机に投げ置いたグシャグシャになった手紙を、
俺は暫く眺めながら呆けていた。
何かを考えようにも何から考えていいか分からず、
あぁそうだと何かを思い立っても思考はすぐに止まり、
俺はただただ人形のように座り続けていた。
その間、考えるとは違って頭に浮かぶのは、
俺を振り回す彼の無邪気な笑顔だった。
まるでドラマや映画の回想シーンのように、
彼は俺に変わらず笑顔を振り撒き続けた。
あんなに笑ってたのにな・・・
目に写るグシャグシャの手紙を見て、
本当は彼の心もこんな風にグシャグシャだったんだと、
なんで全然気付かなかったんだろうと、
グシャグシャにしてしまった手紙を見てると苦しく、
俺は手に取り1枚1枚手紙を伸ばし始めた。
『カサ・・・カサ・・・』
藤 「・・・」
1枚、また1枚って全部伸ばし終わり、
俺は改めて手紙を読み直した。
藤 「・・・ほんと・・・勝手な奴だな・・・」
それなりの時間が経ったからか、
俺はまだ気持ちは沈みぎみだったが、
なんだかそんなに考え込む事じゃない気がしてきていた。
彼が自で勝手なのは今に始まった事じゃない。
本当の彼がどうだったとか今知った所で、
もっとなんかしてやれたんじゃないかとか、
そんなの考えても後の祭りでしかない。
彼は幸せだったと言ってるんだし、これで良かったんだ。
.
さよなら、宏光。
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って思えたらどんだけ良いだろう。
俺はそれから数日、後悔ばかりの日々を過ごした。
やっぱりもっとなんかしてやれたんじゃないかと、
彼の嘘も実は見破れたんじゃないかとそればっかだった。
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朱蝶(プロフ) - いゆらんさん» いゆらんサン♪こんばんは(*^^*)太輔さんも沢山後悔してきましたからね、やっとのやっとしてあげたかった事が出来てる感じです(*^^*)続きも楽しんで頂けるように頑張りますo(`^´*) (2017年9月13日 18時) (レス) id: 03a875af6f (このIDを非表示/違反報告)
いゆらん(プロフ) - こんばんは♪太輔さんの優しさが本当に染みてくるというか何とも言えない暖かい感情になります。泣いた顔を隠すのにお面なんて、本当に素敵です。そして、泣くのはみっくんの担当だから太輔さんは笑わせるよなんて胸熱です。この素敵な続きを楽しみにお待ちしております (2017年9月11日 17時) (レス) id: 3188bfb525 (このIDを非表示/違反報告)
朱蝶(プロフ) - ゆーさん» ゆーサン♪進みの悪さをゆっくり埋めてってるなんて、そんな風に言って頂けるなんて嬉しくて泣けます!有難うございます( ;∀;)続きも楽しんで頂けるように頑張ります! (2017年9月9日 19時) (レス) id: 03a875af6f (このIDを非表示/違反報告)
朱蝶(プロフ) - MISAさん» MISA様♪キュンッてしちゃいました?(笑)こんな優男他にいませんよ!(笑)はい!私の太輔さんはやっぱりMISA様しかおりません( ●≧艸≦)vvv 移行出来るように頑張ります!(笑) (2017年9月9日 19時) (レス) id: 03a875af6f (このIDを非表示/違反報告)
ゆー(プロフ) - こんばんは!更新ゆっくり待ってますよー!というより、やっと会えた2人が離れてた時間をゆっくり埋めていってるって感じでなんだかほっこりしてます。笑 (2017年9月8日 21時) (レス) id: b2d11b2e22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱蝶 | 作成日時:2017年6月5日 19時