色鉛筆の使いかた。

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『ｶﾁｯ…』


北 ｢ｽｩｰ……はぁ〜…｣









家に着いてやっと吸えた煙草。

ゆらゆら揺れて上る煙を見つめながら思った。






久々に仕事とか関係ない人と喋ったなぁ…






北山ｻﾝ…か。

本名呼ばれるのも久々だな…。

今の俺の周りは『コウ』と呼ぶ人ばかり。

だから、北山宏光なんてもう別人のようだった。









『ﾎﾝﾄに有難うございましたっ！』









アリガトウも……

仕事以外で言われたの久々…

別にあんな些細な事で、

自分がイイヒトだなんて勿論そんな事思わない。

それで今までの事が許されるなんて思ってないし。






でもちょっと、嬉しかったかも…






まぁ、多分もぉｱｲﾂと話すことはないだろうけどな。

幼稚園の先生なんて、

誠実･真面目･イイヒトの3拍子だろ？

俺とは住む世界が違いすぎんな。

なんかお坊っちゃまって感じだったし。









『ﾋﾟﾛﾘﾝ…』


北 ｢？｣


《コウ、明日一緒にご飯食べてから行かない？》


北 ｢……めんどくせ…｣


《やったー♪肉がいいな〜♪》


《OK♪お姉さんに任せなさい♡》


北 ｢ﾊﾝｯ…ババァのくせに何がお姉さんだ…｣









あーあ…

めんどくせぇ…









北 ｢死にてぇ…｣









毎日ﾎﾝﾄつまんねぇな…

なんかあってもﾄﾗﾌﾞﾙばっかだし…









北 ｢……｣


『ｶﾁｶﾁｶﾁ…』









部屋の電気に照らされるｶｯﾀｰの刃。

よくﾄﾞﾗﾏとか漫画だと、

刃に自分の姿が映ったりするけど、

それは包丁とかの話でｶｯﾀｰごときじゃ映る訳もない。

でもまぁ、映らなくていい。

いないんだから。






俺が知ってる北山宏光はいないんだから…






ｶｯﾀｰの刃をしまい、ﾍﾟﾝ立てに戻した。

風仕事をするようになってから、

体を傷付けるのはやめた。

同情を買うって話ならありだけど、

もぉ無数の跡が残ってる。

それだけで充分だったし、

新しくつけて誤魔化したりするのがめんどくさくなった。






それに、こんな事しても死ねない…






それならもうする意味なんてない。

何度やったって、死ぬ気なんて俺にはねぇんだよ…

こんなのただ自分可哀想って思うためだけの傷。









北 ｢ﾌｯ……｣









何が可哀想だ…

全部自分が招いた事のくせにな…。

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