君はソレに気付かない。

君はソレに気付かない。12 ページ12

＜藤side>





打ち合わせ中、

資料を見るﾌﾘして、

誰かに話をかけながらﾐﾂを視界に入れる。





バレないようにバレないように…ね。





目があったら俺の気持ちがﾊﾞﾚちゃう。

でも見ていたいんだ。





ほら、その唇を舐める癖…

結局昔から変わってない。

俺はやめて欲しかったんだけどなぁ…

いや、正確には俺の前でしかしてほしくないんだ。




その仕種見るとかぶり付きたくなる、

俺以外の奴らを誘っちゃ駄目だろ?

って苛めたくなる。




でも今はそれが出来ない。

『しちゃいけない』んじゃなくて『出来ない』んだ。

ﾐﾂのためにも俺のためにも自分で自分を縛った。





押し殺す欲が高まれば高まるほど、

良い歌詞が書けると思ったから。





焦れったいこの感じ。

俺の歌詞はこの感じなんだ。

誘うﾌﾘしてﾎﾝﾄは俺が1番君を欲しがってる。

君の仕種全てが俺を誘ってるんだ。




私の事欲しいでしょ?って。




馬鹿な俺はまんまと引っ掛かるんだ。

その無意識に放たれた誘惑に。





鞄からﾉｰﾄを出し浮かんだﾌﾚｰｽﾞを書き留める。









『 今すぐキミが欲しい。 』









横 ｢……激しいね(苦笑)｣

藤 ｢欲丸出しって感じだろ?(笑)｣

横 ｢ﾐﾂとのｺﾗﾎﾞの歌詞?｣

藤 ｢そう。｣

横 ｢だいたい出来た?｣

藤 ｢見る?｣





(( ﾍﾟﾗ ))





横 ｢…ふっ。昔の誰かさんを思い出すね(笑)｣

藤 ｢だろ?そのままだよ。｣





これはずっと前に感じた焦れったさ。

君に…ﾐﾂに片想いしてた頃の俺だ。





あの頃のように近くに居るのに触れられない。

あの初めて抱いた日みたいに俺を求めて欲しい。

次の日から普通通りになってしまった君。

ﾎﾝﾄの気持ちが知りたくて知りたくて、

何度も仕掛けるのにするりと逃げてしまう。






俺ばっか君に夢中になっていったあの感じ。






今回は君に夢中になってほしい。






だって焦れったさを感じたいんだろ?

君はソレに気付かない。13→←君はソレに気付かない。11

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す