０℃の短針と刻む夏。

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＜藤side>





お婆ちゃんから頂いた500円玉で買った傘は、


立派なもんだった。


ビニール傘じゃなくても500円で買えるのか。


選んだのは黒の傘。


うん、大事にしよう。









藤 ｢今日は信号運悪いなぁ…｣









会社への道のりでまた大きな交差点の信号に足止め。


雨は夕立と言うんだろうか、


突然の豪雨で傘を持たない人が多かった。


みんな屋根の下で信号を変わるのを待っていた。


お婆ちゃんのおかげで俺は助かっちゃったな。









.





『キイイイィィィ』




.









突然非日常的なブレーキ音が耳に響いた。


何事かと傘を少し上げその音の先を見ようとした。









.





でも俺の視界に入ったのは、宙に舞う黒い傘。




.









『キャァァァァァァッッ』



『おい！救急車！人が跳ねられたぞっ！！』



『兄ちゃん大丈夫かっ！？』



『運転手も気失ってるぞっ！！』









.





耳に入る阿鼻叫喚…


救急車…？事故…？


なんか身体痛い…


あれ…なんで俺地面に倒れてんだ…？


折角傘買ったのに濡れちゃったなぁ…





.









『兄ちゃん！しっかりしろっ！聞こえるかっ！？』









.





ボヤける視界に男の人が叫んでる…


あぁ…事故にあったの俺か……




.









そこで俺の意識は飛んだ。

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