矢印の方向 ページ42
先生「それじゃあ、今日の授業はここまで」
その言葉と同時に授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
今日も今ひとつ授業に身が入らなかった・・・
何でって、あの時の流川が頭から離れないから。
あの後アイツからは何にもないんだけど。
ってゆうか、私が勝手に期待していただけなんだけど。
バスケしか興味ないバスケバカなんだから何にもある訳ないし。
私は何を期待してる?
中学の時だってそうだったじゃん。
勝手に舞い上がって勝手に期待して勝手に落ち込んで・・・
また同じことの繰り返し。
でもそれはもう嫌なの。
だから何も期待しないし、関わらないって決めたじゃん。
やっぱり最初から関わらなきゃよかったんだ。
いいや、これからだって遅くない。
やっぱりアイツには会わない方がいい。
そんなことを考えて廊下を歩いていると、
た「えみ、どした?なんかめちゃくちゃ暗くね?」
たかちゃんに顔を覗き込まれた。
「!たかちゃん驚かさないでよね!」
た「イヤイヤ、驚かせてない。えみが深刻そうに歩いてたから心配で声かけたの!」
「えー、私そんな悩んでるように見えた?」
た「見えた見えた。この世の終わりのような深刻な顔してた」
「そんなに?」
た「いや、ウソ。そんなにじゃない」
「コラ、たかちゃん。人をからかわない」
た「ハハッ、ごめんごめん。なんかえみからかってると面白くて」
たかちゃんは悪びれた様子もなく、あははと笑ってる。それを見るとこっちも笑うしかない。
「もう!」
た「よかった」
「なにがよ?」
まだからかってるのかと、横目でたかちゃんを睨む。
た「いや、えみは笑ってる方が似合うから」
そう言ったたかちゃんはすごく優しい瞳をしていた。
「たかちゃん・・・」
た「あ、そうだ。えみに良いものをあげよう!これ今度の金曜日のライブのチケット。騒がしい歌でも聞いてたらさ、きっと嫌なこととか紛れると思うからおいでよ」
「たかちゃん、貴重なチケットありがと。必ず行くね」
た「よっしゃ、えみが来るなら張り切んないとな!」
「うん!私、ライブとか初めてだからすごい楽しみっ」
た「おっ、えみのお初をいただけるのか」
「なにそれ!たかちゃんセクハラオヤジだよ!」
あははっという2人の笑い声が、さっきまで静かだった廊下に響き渡る。
馬鹿らしいけど、少し笑ったおかげで、なんだか心が軽くなった感じがした。
たかちゃんの優しさが身に染みた日だった。
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作者名:けい | 作成日時:2015年6月5日 5時