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Aは、太宰や条野とは全く関係ない方向を見る。そこには特務課員もいない。ただの雑踏だ
「どうしました?」と条野は思わず声を掛けた。Aの心音が、驚愕と焦燥と混乱と…様々な音で溢れていたからだ
条野がしっかりと手錠を握っているが、手先が器用な太宰が抜け出せない筈がなかった。しかし何もせずに、じっとAを見詰めている
Aの表情に、条野が読み取ったままの感情が表れていたから。そして彼女の目が、どこか遥か遠くを見ていたからだ
__何かが起こっている。だが探偵社員に起きた訳ではない__太宰は直感的にそう思った
『私、余計なことしてたんだ』
Aは震える声でそう呟いて、条野に押し当てていた指鉄砲を下ろした
『あの人の命令でも、断ることはできたのに。なのに私、こんな所に来て、余計なことして。何も進展しないのに、離れて、怪我させて…』
そして、両手で顔を覆って、一言。消えいりそうな声で、自嘲した
莫迦みたいだ、と。
『…大切な人がいるの。私に生きる意味を、価値を、与えてくれた人』
Aは手を離して太宰を見た
柔らかく、笑った
『貴方はそれ以上のものを、私にくれる?』
*
花が咲いた。
凛々しい花が咲いた。
その花は何とも頑丈で、摘むことができなくて。
だが軈てその花は、椿のように地に落ちた。
ぼとりと鈍い音を立てて。
そしてだんだん枯れていく。
枯れて。
枯れて。
枯れて。
浸透して凛々しくなくなった花は、先から形を失っていく。
まるで砂のように形が失われる。
摘むことのできなかった凛々しい花は、呆気なく消失した。
*
はっとした
視認するのは車の中。鼓動が速く、息が上手くできない
手先が冷たい
『……………』
静かに深呼吸して、走行中の車窓の外を眺めた
悪夢を見た気がした。手が、震えている
震えを隠すように拳を握り締める
最悪の結果には、なってほしくない
.
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夢蝶蘭(プロフ) - うさぎさん» うわー!その通りです…ご指摘ありがとうございます!いつも更新遅くてすみません(><) 頑張ります! (2019年2月9日 1時) (レス) id: 6710be5598 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎ - あの、「248話」の15行目が「早く食べないよってこと」になってますよ〜!多分「早く食べなよってこと」ですよね?もし私が間違っていたらすみません。続きのお話、楽しみにしています! (2019年2月8日 23時) (レス) id: fab1d5b1bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢蝶蘭 | 作成日時:2018年9月13日 23時