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「やられたね」





太宰はさして残念でもなさそうに呟いた





「追跡には気付いていたが……あの《猟犬》部隊が相手では人混みに逃げ込んでも無駄か」


「えぇ。群集に逃げ込めば群集ごと消すだけです」





男は薄く笑う。右耳に着けた耳飾りが揺れた





「ふふ……聞こえます、貴方の憤り」





孰れそれが罰への恐怖と堕ちる……その瞬間が待ち遠しい





「……君とは気が合いそうだね」





太宰も笑う。そして、自身の腕に掛けた手錠を持つ男に尋ねる

何故、今頃自分を逮捕しに来た?と。

男は不思議な出来事を思い出すように、顎に手を当てた





「奇妙なことに……或る時、急に証拠が復活したのです。指紋、録音、写真……」





まるで消されていた照明のスイッチが、再び灯ったように。



太宰が眉間に皺を寄せた時、男は思い出したかのように微笑んで云った





「では、お話もここまでです。行き__」





__訂正。最後までは、云えなかった。





『手錠を外しなさい、条野』


「…………」





背に違和感があったのだ。何かが押し当てられているような、違和感。

だがその正体はつい先刻理解した。今自分に声を掛けてきた女の指だった

この細さ……人差し指か。沈黙していると、力を込められる





「……私情ですか?朝比奈副長官」


『残念ながら仕事ですよ、条野捜査官』





明るい声で話す二人__朝比奈Aと条野採菊。Aが条野に押し当てる指は、紛れも無く凶器である



__流石だ。条野は薄く笑った

この競馬場にAが来ているなんて、ましてや直ぐ傍にいたなんて、指を押し当てられるまで気付かなかった

目を失った代わりに他の五感は鋭くなった条野が、だ

しかし、と考える。この競馬場のそこかしこに特務課員がいる。Aなら兎も角として、彼等に自分が気付かないとは思えなかった



ならば残るは一つしかない。司馬遼太郎の異能だ

彼のテレポートで "飛んで" 来たのなら納得がいく

こんな人混みの中にテレポートなんて、と引っ掛かるが、目の前の犯罪者・太宰治の驚いた様子を察知しても可能性はそれしかない






『任命式も未だなのに、相変わらず情報通だね』





__朝比奈A副長官。彼女が探偵社に入る前は、長官補佐だった。種田があれやこれやと手を回し、この階級になったのだ

一度辞めているから、ほぼ飛び級。





「敵に回ると恐ろしいのは貴方一人ですからね。常に把握しておかなくては」





Aはくつくつと笑った

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夢蝶蘭(プロフ) - うさぎさん» うわー!その通りです…ご指摘ありがとうございます!いつも更新遅くてすみません(><) 頑張ります! (2019年2月9日 1時) (レス) id: 6710be5598 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎ - あの、「248話」の15行目が「早く食べないよってこと」になってますよ〜!多分「早く食べなよってこと」ですよね?もし私が間違っていたらすみません。続きのお話、楽しみにしています! (2019年2月8日 23時) (レス) id: fab1d5b1bf (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夢蝶蘭 | 作成日時:2018年9月13日 23時

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