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《天人五衰》。
六道輪廻の最高位たる「天人」が、死の間際に顕す五つのサインの事である
それを見立てた連続猟奇殺人が四件起きている
衣服に垢と脂が染み出す「衣裳垢膩」
頭部の華鬘が萎れ腐る「頭上華萎」
身体が汚れ臭い出す「身体臭穢」
腋の下から汗が流れる「腋下汗出」
政府からの緊急要請を探偵社が受け、敦は調査に出ていた
《天人五衰》。事件は未だ四件。最後の衰、「不楽本座」が起きていない
それを食い止めるべく、探偵社は確かに依頼を受けたのだが、福沢と社長の間に意見の相違があった
乱歩が「依頼を断る」と云ったのだ
「探偵社は滅ぶ」
乱歩は友人である小栗虫太郎の「これから来る大きな仕事を受けるな」という言葉を信じたのだ
だが殺人を止める為、福沢は首を縦に振った。対して乱歩が取った行動は、
「なら勝手にすればいい!」
「探偵社滅亡」の真相を追う。探偵社と乱歩個人の同時調査である
(「不楽本座」は「自分の席に戻るのを嫌がる」か……一体どんな残虐な殺害法だろう?)
そう敦が考えた時、電話が鳴った。応答すると、特務課の参事官補佐である坂口安吾だった
《太宰君と連絡が取れないのですが、居所をご存知ありませんか》
「いえ……」
少し緊張した面持ちで答える敦。だが、直ぐに真新しい記憶が蘇る
「あの…Aさんは…」
あの日、乱歩は一日中毛布に包まって出て来なかったが、代わりに後から来たにも関わらず一瞬で全てを理解した太宰から聞いた
最後には皆解っていたが、頭のどこかで「そんなことはない」と認められなかったのだろう
太宰はおちゃらけた風に云った。「特務課に取られたね」と。
だが、その態度を誰も咎めることはなかった
詰まりAは今、特務課に居る筈だ。ならば太宰の居場所が判るのではないだろうか。
《ああ、彼女は早朝から出ているんですよ。長官と組んで何やらしているそうで》
安吾の云い方に棘があるように感じて、敦は苦笑と共に、今は傍にいないAのことを聞けて少し安堵した
連日顔を見ないのは、Aが特務課員に休暇を与えた代わりに、その罰が己へと大量に与えられていた日以来だったから、どんな様子なのか心配していたのだ
「そうですか…」
思ったより敦が柔らかい声を出したので、安吾は気まずそうに視線を彷徨わせて、軽く咳払いをした
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夢蝶蘭(プロフ) - うさぎさん» うわー!その通りです…ご指摘ありがとうございます!いつも更新遅くてすみません(><) 頑張ります! (2019年2月9日 1時) (レス) id: 6710be5598 (このIDを非表示/違反報告)
うさぎ - あの、「248話」の15行目が「早く食べないよってこと」になってますよ〜!多分「早く食べなよってこと」ですよね?もし私が間違っていたらすみません。続きのお話、楽しみにしています! (2019年2月8日 23時) (レス) id: fab1d5b1bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢蝶蘭 | 作成日時:2018年9月13日 23時