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可憐な少女が廊下を静かに歩いて、ある部屋の扉をそっと開けて中を覗き込む

その一室では、読書をしている女性がいた

帷幕(カーテン)を開けて時計の音をBGMとし、静かに本を読む女性。口元には微笑が浮かんでいる



少女は暫くその様子を見ていたが、不意に女性の口が開いた





「A」





女性が本から目を離し、扉から覗いている少女を見る

少女____Aは、バレていたことに驚いてから控えめに尋ねた





『お話…してもいい?』





女性のにこやかな返事を貰った後、Aは彼女に抱き着いた

そんなAの頭に手を置いて、女性は尋ねる





「如何したの?何時もはそんなに控え目じゃないのに。私が本を読んでいたから?」


『うん…読書をしている時に邪魔をされたら厭じゃない。少なくとも私はそう思うよ』





女性は苦笑したが、内心嬉しく感じていた

Aは何時も、自分に気を遣ってこの部屋に近付かない。だが今日は来てくれた。それが嬉しかったのだ





「母親に気を使わなくていいのよ。Aに邪魔されても、ちっとも厭じゃないんだから」


『でも…』





女性____Aの母親は、娘を膝の上に座らせた





「貴方と読書を天秤にかけるとしたら、貴方を乗せた瞬間に読書が吹っ飛ぶわ」





Aは母の云ったことを、小さな頭で想像した。自分を天秤に乗せて元から乗ってた読書が吹っ飛ばされるところまでを。

そして母の美しい顔を見る





『私が勝ったってこと?』


「そう。私にとってAは、読書より大切なの。世の中の母親っていうのはみぃんな、自分の子供が一番大切なのよ」





Aは少し考えてその言葉の意味を理解し、母親をジト目で見る





『お母さん、それ嘘でしょ』


「ああ…うん、判ってた…貴方なら気付くって…物知りなのは良い事だけど、もう一寸純粋に育ってほしかったかな?」


『お母さん達がいろんな本を読ませてくれるからだよ』


「本は好き?」


『大好き!』





母は優しく笑った。そして、自分の額とAの額を当てる





「私も、Aのことが大好きよ」





小さな身体を抱き締める。この子はこれから大きくなっていくんだなぁ、と当たり前のことを思った

Aの未来を、見たいと思った





『お母さん』





Aが腕の中で少し動いたので、苦しかったのか、と直ぐに離す

けれどAは笑っていた





『私も、お母さんが大好き!』





この子を一生守ろう、と思った



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夢蝶蘭(プロフ) - 知佳さん» わざわざありがとうございます!是非使わせていただこうと思います! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 6710be5598 (このIDを非表示/違反報告)
知佳(プロフ) - 横浜の街のタワーは、展望台になりますが、マリンタワーというのがありますよ♪ (2020年4月4日 0時) (レス) id: 3e74e0ac2c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夢蝶蘭 | 作成日時:2018年4月2日 23時

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