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「もう寝ろ」





連れて来られたのは医務室。乱歩さんは私を寝台に座らせてそう云った

この時間が早く終わってしまうのが惜しくて、眠いけど寝たくなかった

でも時間を確認するともう三時を過ぎている。流石に寝ないとなぁ



大人しく寝台に入ると、それを見た乱歩さんは傍らの椅子に腰掛けた。私が不満そうに口を尖らせたのを見て、彼は云う





「僕は眠くないって云っただろ」


『一緒に寝ようよ』


「だから僕は…」





乱歩さんのそこで言葉を止めて、私の顔を見て盛大に溜め息を吐いた

そして寝台に入ってくる。私に背を向けて寝転んだ

えへへ、と笑ったら、早く寝ろ、と怒られた





『___ねぇ、乱歩さん』





返事はないけれど、まだ眠っていない乱歩さんの背中を見て話しかける



私が何年も前から思ってたこと。昨日の夜、彼が死んでしまってから、もっと思うようになった

種田さんの部屋で一人、ずっと思っていた

誰も教えてくれない。自分でも判らない。だから確かめる方法がなかった

でも、私のことは誰よりも私が知ってるんだ。判らなくても、知ってるんだ





『私って、おかしいんだよね』





…沈黙は、肯定。

いつまでも返事が返ってこなくて、私が我慢できずに俯いたら、乱歩さんが私の方に身体を向けて頭に手を置いた

ぽんぽん、と何度か優しく叩かれる。それが胸に染みて、目頭が熱くなってきた

気付けば乱歩さんの胸に顔を押し当てて、声を殺して泣いていた



何で私の勘は、私のことを教えてくれないんだろう

何度も考えて、思った。私の為(・・・)なんじゃないかって。

今まで屠ってきた人のことは、考えないようにしてきた

怖いから。向き合わずにずっと、逃げてきたんだ



同じ色だね、と彼は云った

違う。瞳の色だけじゃない。私達は、根本的(・・・)に似ていた

でも圧倒的に違っていた。私は逃げた。彼は逃げなかった。だから苦しんだ



___私から云わせれば、彼の方が綺麗だ



私は彼に何をしたの。如何して廃ビルに入った周ちゃんの記憶を、視せてくれなかったの。

誰も何も、云わなかった。廃ビルで私が眠っていた処に、周ちゃん達が来たって聞いた。それだけなら、私が視ても問題ないでしょ?

皆、何を隠してるの?あの場に居た周ちゃんも聖も、遼も。多分、治も知っている



その隠し事は、優しいのかもしれない。けれど私は、怖いと感じた




.

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夢蝶蘭(プロフ) - 知佳さん» わざわざありがとうございます!是非使わせていただこうと思います! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 6710be5598 (このIDを非表示/違反報告)
知佳(プロフ) - 横浜の街のタワーは、展望台になりますが、マリンタワーというのがありますよ♪ (2020年4月4日 0時) (レス) id: 3e74e0ac2c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夢蝶蘭 | 作成日時:2018年4月2日 23時

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