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勘に頼っていると、
その旧そうな建物を見上げて中に足を踏み入れ、今日、種田長官と二人きりになった時のことを思い出す
先に口を開いたのは、呼び出した私ではなく種田長官だった
「狙われてる理由は判るか」
『あ〜…否、今回は狙われてるって云うより…』
頭を掻いて言葉を濁すと、長官が不思議そうな顔をした。溜め息を吐いて答える
『頼られてる、ですね。正確には』
「何?」
姿勢を正して真っ直ぐに長官を見る。目を見て、はっきり云おう
『神楽坂と共に行動しますが、私達が別行動を取った場合…彼の保険はかけておきます。私の為に無茶をすると思うから』
先に皆が居る扉に目を向けて、『多分、真っ先に頼るのは遠藤で___』と云った処で遮られた
「自分の………保険は?」
長官は呆然としていた。ちょっと珍しいな、なんて思い乍ら苦笑して答える
私は大丈夫、と。
『ちゃんと戻って来ますから』
「…だが記憶を改竄する異能者…何かあっては」
『私は何ともなりません。私は私の侭でいる。これは、約束できる』
空気が張り詰める。真剣な顔から一転、私は微笑んだ
『救いたいの。助けてって云われたから、救いたくなっちゃったの』
この三日間は探偵社員じゃないのにね
「三日間?」
『あ、声出てました?乱歩さんに三日間の出禁を喰らいましてね』
ふふ、と笑えば、種田長官は諦めたように溜め息を吐いて「任せよう」と云ってくれた
処で聖の保険だけれど、此処に辿り着く前にあった公衆電話を借りた
彼は思ったより早く電話に出たのだ
《はい》
『あ、遼?仕事中?』
《え、Aさん…?非通知…え?》
あの混乱工合はとてもIQ130とは思えなかった
『まぁいろいろあってね。お願いしたいことがあるんだけど』
《はあ…何ですか?》
相っ変わらず眠そうな声だな。大丈夫?って思うけど遼は頼れるんだよねぇ
『聖を見張っておいて。何かやろうとしているなら止めて。手遅れだったら太宰治の元に行って』
《え?ちょ、待っ》
速攻で切ってやった。公衆電話って良いよね、折り返し掛かってこないから。
目の前の扉を開けると、窓際で読書をしている男の姿が目に入った
金髪で端正な顔立ち。如何にも仏蘭西人が着そうな平服で格好良い
私は彼の前にある椅子に腰を下ろした
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夢蝶蘭(プロフ) - 知佳さん» わざわざありがとうございます!是非使わせていただこうと思います! (2020年5月18日 23時) (レス) id: 6710be5598 (このIDを非表示/違反報告)
知佳(プロフ) - 横浜の街のタワーは、展望台になりますが、マリンタワーというのがありますよ♪ (2020年4月4日 0時) (レス) id: 3e74e0ac2c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢蝶蘭 | 作成日時:2018年4月2日 23時