31＊浮かぶ顔 ページ31
ーSMー
ヒョクとの甘い時間の後、ヒョクとゆっくり話をした。
最低な僕。このままヒョクを自分のものにしたいという欲望と、本当にこれでいいのかという渇望を悶々と自分の中で繰り返す。
それでも。ヒョクの笑顔を見ると、そんな考えも全て吹っ飛ぶんだ。
僕のそばで笑っていてほしい。
ごめんね、ヒョク。わかってるんだ、ヒョクがドンへを忘れられてないことも、僕がドンへに敵うはずもないことも…。
それでも、求めてくれたヒョクが愛しくて。ドンへの元へ素直に送り出せない僕でごめん。
そんなことを思っていた時、ふと、キュヒョナの顔が浮かんだ…。
キュヒョナはこんな僕をどう思うだろうか。
やっぱり、ヒョン、最低ですね、と言うんだろう。
でも、その言葉をどんな表情で言うかな。
呆れたように？怒りながら？冷たい目で、冷たい声で…？
まあ、考えても仕方のないことだから。
悪者になろうが、嫌われようが、僕だっていつも聞き分けのいい奴じゃない。
欲しいものは欲しい。そういう僕だって僕なんだから。
ヒョクに少し外の空気吸いに行ってくるね、そう言ってベランダに向かうと、ドンへがいた。
だから、僕の想いを伝えた。
でも…ドンへの言葉を聞いて、ああ、やっぱり敵わない。そう思った。
だって、ヒョクが幸せならそれでいいと。だけど、その言葉とは裏腹に、表情が痛いほど辛そうだったのに、一瞬たりとも僕から目を逸らさなかったから。
ドンへとヒョクを引き裂いておきながら、それでも自分を優先させている自分が情けないのと同時に、かっこ悪かった。
それに比べてドンへはかっこいい。
アホのドンへから想像がつかないほどに。
僕は本当に何をやってるんだろう。
可愛い弟達にあんな顏をさせて、ぎこちなくさせて。
ドンへに、そっか、と一言だけ返し、電気もつけずにシャワーをひたすら浴びる。
そして、湯船にそっと浸かり目を瞑る。
すると電気がついて浴室のドアが開き、びっくりして見つめると、キュヒョナもまた驚いた表情で僕を見ていた。
『あ、キュヒョナ…ふふ、びっくりした。電気もつけずにいてごめんね？すぐ、出るから』
立ち上がり、湯船から出ると、キュヒョナの指先が僕の頬を撫でる。
『キュヒョナ？』
僕より背が高いキュヒョナを見上げ、名前を呼ぶと
『ヒョン…ひとりで泣かないで。僕じゃ、ヒョンを支えられないんですか』
と言う。キュヒョナ、僕、泣いてないよ？
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作者名：さやとぅく | 作成日時：2012年8月16日 18時
