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『A』

｢なんですか｣

『ちゃんと前見ないと危ないよ』

｢檜山くんのせい｣

『なんで俺のせいなの(笑)』

｢だって檜山くんが…！｣

『だって俺が？』

｢……やっぱなんもない｣

別々で払えますか？なんて店員さんに聞くAをまとめて払った方が早いでしょと丸め込んでお会計を終わらせて店を出る。

さらりと手を繋げば俯くから、あぁ照れてんなって心がキュンと疼く。

｢付き合ってもない男女が手繋ぐとかどうかと思う！｣

『じゃあ付き合う？』

｢は？え？なんでそうなるの？そういうとこだよ？｣

『俺好きな子にしかこんなことしないよ』

いきなり顔を上げたと思えばそう言い放って手を離そうとした、のを阻止したんだけど。

｢檜山くん頭でも打った？｣

『本気だけど』

｢っいや、あの、その、｣

『ねえ、Aは俺のことどう思ってんの』

駅はもうすぐそこなのにお互い立ち止まる。俺はもうここまできたら1歩も引かないよ。落ちてきた髪の毛を耳に掛けてあげると更に赤くなる顔。

『まあでも、デートのお誘いに乗ってくれるくらいには俺のこと良く思ってるよね』

｢へ、｣

『これからもっと攻めるから覚悟してて』

案の定次の日から俺の事を避けまくるAだけど俺の気持ちは止められないし。伝えたならあとはアピールするのみ。

｢檜山くんってやっぱり甘い｣

『食べてみる？』

｢でも毒ありそうだよね｣

甘い匂いを纏って今日も君のところへ。

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