159話 ページ6
風)まあな。
貴)WORLD TOURおめでとう！
風)ありがとう。あ…
久しぶりすぎて、声が出ない。
話したいことが、伝えたいことが、山ほどあるのに。
貴)やっぱり私のしたことは正しかったね
と笑って話すA。
でも、俺は知ってるよ。その笑顔が偽物だってこと。
風)Aのおかげでここまで来れた。
俺たちが…俺がやってここまで来れたのは、
Aを迎えに来るためだ。
貴)あと、どれくらいで帰るの？
帰ってからも忙しいだろうねー
と、俺と目を合わせることなく、話を無視するA。
落ち着かないのか、俺がいる方の片側にだけ髪を流す
ように前に持ってくると、長い髪をいじくっている。
すると、手ぐしを通した髪の隙間から胸元に光る
ネックレスを見た。
光っていたのは、“F”の文字だった。
「私の頑張る力の源なの」
さっきAの友達が言ってた話を思い出す。
風)A、一回くらい素直になれよ。
貴)…三年前、私は正直になりすぎた。
観覧車で風磨が気持ちを伝えてくれた時、自分の
気持ちに正直にならなければ、あんなことにはなら
なかった。
風)何が、いけないんだ？
貴)みんなに、ひどいことをした。
風)Aは優しすぎたんだ。
貴)優しくなんてないよ。
傷つけたものが多すぎるもの。
風)でも、1番傷を負ったのはAだろ。
黙りこくるA。
風)言い方を変える。自分の気持ちを優先しろ。
そう言ってAに一枚のチケットを渡す。
風)7月にコンサートがある。待ってるから。
そう言って俺はAを残して、去って行った。
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作者名：テイル | 作成日時：2020年7月30日 1時
