狐417 ページ41
Aside
中村「わっ？！」
私は、莉桜から鞄を奪った。
アサさんのものだ。
磯貝「何してるんだ、」
悠馬くんが呼びかけていたのも耳に入れない。
カチッ、と鞄を開いた。
中には想像通り、
薬の入った注射器が並んで入っている。
忌々しい色をした。
迷いなくオレンジ色の液体が入った注射を取り出した。
素早く皆から距離を取って、注射器を握りしめる。
そう、これは、私が過去に使ったことのある。
記憶を『全部』消すための薬。
A「来ないで！！」
叫んだ。
私の方に来ようとしていた奥田さんと速水さんが足を止める。
まだ私は泣いていた。
情けないくらい涙を流していた。
カルマが、大好きだったんだ。
確かに神様に大切なもの全部あげるって言った。
けど、私は、カルマが生きているのなら。
忘れてしまったのなら。
A「誰も、殺されずに済んだ。
私はもう充分だよ……？」
注射器の塗装を剥ぐ。
視界にはぼうっと座っているカルマ。
さよなら。
君が、生きていてよかった。
もう一生会うことはないかもしれない。
A「カルマが私を忘れた世界なんて、耐えられない。なら、」
注射器。
これを使えば。
A「私も記憶を消して元の日常に戻るだけ。
……これが一番良いんだよ……！！」
渚「そんなの……絶対に、だめだ！！」
渚が叫ぶ。
でもね、何を言ったって無駄だよ。
私はカルマが大好きなんだ。
大好きすぎて、辛いんだ。
こんなことになるなら、
人を好きにならなきゃよかったんだ……！！
……そんなこと、言っちゃだめだよね。
カルマに会えて私は幸せだったんだ。
涙を拭った。
何回も、私は記憶を消した。
そんな風に私の名前を呼ばないでよ。
ね、Ｅ組のみんな。
寂しくなっちゃうからさ。
忘れたくないって思っちゃうから、さ……。
A「……楽しかったよ。E組」
私は何も考えないようにして、
ただ腕を振り下ろすように、
首筋に、それを刺した。
全部、忘れるんだ。
カルマと会ったこと。
カルマが好きだったこと。
E組の皆も。
全部、全部。
何回だって、忘れてやるんだ＿＿＿＿！！
E組の皆が走ってくる音が聞こえる。
叫び声が、遠巻きに聞こえる。
もう私はそこになかった。
赤の他人だった。
最後に注射器をきゅっと押し込んで、
冷たい感触の後、
＿＿＿＿後悔してるの？
記憶がそこで途切れた。
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楽音ヒマリ(プロフ) - 夢主や業君とE組生徒達の絆の関係など素晴らしくて終始涙が止まりませんでした…1番は最後の浅野君が登場した時、思い出してないんだなという所に胸が締め付けられてしまいました…理事長は知ってたのか等の考察が出来る最後でした、ありがとうございました (2019年8月13日 3時) (
レス) id: 67b7da66f0 (このIDを非表示/違反報告)
エリん(プロフ) - 久し振りにどうしても気になって来てみましたが…まだこんなに読んでもらえてコメントも貰えるなんて…どんなコメントでも嬉しいです。沢山の方に支えて頂き、楽しんで頂き、本当にありがとうございます。 (2018年8月30日 21時) (レス) id: 307616027c (このIDを非表示/違反報告)
巫女 - カルマくんが好きでいろんな小説読んできましたが、1番感動しておもしろかったです。話が終わってしまい寂しいですが、この小説を書いていただき、本当にありがとうございました！！次の作品も楽しみにしてます。 (2018年8月6日 15時) (レス) id: 1371580f3c (このIDを非表示/違反報告)
五十鈴 - ごめんなさい！何か、話の最後がズレ過ぎて、よく分かりませんでした (2018年7月20日 22時) (レス) id: 78c191449c (このIDを非表示/違反報告)
真命 - すごく感動しました！久しぶりにこんな良いお話を見ることができました！ (2018年6月18日 12時) (レス) id: 005e3ba049 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリん
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/list/Erin02rabb1/
作成日時：2016年12月19日 16時
