闇の天使の鈴の音~弌~ (ページ28)

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扉～ハクside～ページ28

俺はAを初めて見た時を鮮明に覚えている。

月明かりに照らされ今にも闇に溶けていきそうなあの儚い彼女を。

現に今も月光に照らされるAはこの世のものとは思えない程に美しい。

綺麗な声と裏腹に感情のない言葉。
俺が眠ったお前に惚れてると伝えたあの夜とは明らかに違う。

『私はここで眠るから気にしないで』

自分は強くなければいけない。人を信じる事への恐怖。そして、｢1人にしないで｣という確かな感情を
Aの真っ黒な瞳が語っていた。

そこで俺は確信した。

Aが歌う歌は己の願いだと。

孤独を歌うAは誰よりも孤独を抱え嫌う。
独りでいることの恐怖をこいつは知っている。

『どうして？ただ一緒に旅をしているだけじゃない。他人よ？赤の他人。なら、ほっときなさい。』

赤の他人...。Aは俺との間に分厚い壁をつくる。

ハ｢一緒に旅をしてる人間が赤の他人なのか？俺はお前を1人にはしねぇ。頼まれても無理だ。｣

『え？』

言ってしまいたい。お前が好きだと。
伝えればお前は何を思う。

ハ｢なぜ俺との間に壁をつくる｣

俯き答えようとしない。
いや、答えられないのかもしれない。

ハ｢大丈夫だ。｣

横にいるAを抱きしめれば
小さく嗚咽を漏らした。

ポツリポツリと話し始めた。