死にぞこないの死にたがり【宮侑】 (ページ7)

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部室でページ7

「あー！！！」

「なんや、うるさいでツム」

「訊き忘れた！！あいつ何組や！！」

部活が終わって、やっと思い出した。

なんかもやもやするなぁと思っていたけれど、その正体はこれか。

俺、あの子にいろいろ訊き忘れた。

「名前は？！クラスは？！部活は？！」

「誰のこと？」

「好きな子でも出来たんか？」

頭を抱える俺のまわりに、ぞろぞろとバレー部２年が集まってくる。

「なぁ、お前ら知っとる？人形みたいにかわええ女の子。俺らと同い年」

もっと詳しく伝えたいけれど、俺の乏しい語彙力じゃ伝わる訳がなくて。

皆が口を揃えて「さぁ…」と首をひねるなか、角名が「あ、」と声をあげた。

「及川Aじゃない？７組の」

及川、A。

初めて聞く名前だった。

７組か、遠いな。そりゃあ知らないわけだ。

「角名、知り合いなん？」

「去年、委員会が一緒だったから」

「そいつ、めっちゃ変な奴やない？」

俺の質問に、角名は「は？」と首を傾げた。

え、なんか俺間違ったこと訊いた？

「いや、めっちゃ普通の子だったけど」

「友達おらんとか、ない？」

「そんな風には見えなかった、…なんかあったの？」
「いや、ちょっと気になって」

盛り上がる俺達が気になったのか、なんやなんや、恋煩いか、と先輩たちまで話に加わってきた。

違いますって、と適当に流しながら、彼女のことを思い出す。

いやいや、死にたがっている人間に友達なんてものがいていいのか。

寂しくなるから友達は作らない、みたいな感じだと思っていたけれど、案外そうでもないらしい。

ま、あんな可愛かったら友達くらいできるか。

＿＿＿及川A。

忘れないようにもう一度心の中で復唱したら、ほわ、と心が温かくなった。