あした ページ44
「送ってくれてありがとう。遅いのにわざわざごめんね」
「ええねん、俺がしたくてしたんやから」
侑は、私の頭に手を置いてにっこり笑った。
私の小さな部屋の玄関には、侑はちょっと大きすぎる。
リビングまで上がって、ちょっと休んで、と頼んだら、悪いからええよって断られたけど、狭い。
侑が、近い。
「…ぁ」
「ん?」
「ジャージ、ずっと着てた…」
部活中に侑に貸してもらったジャージ。
なんとなく、ずっと着たままにしてしまっていた。
「折角洗って持ってったくせに、また私が着ちゃったね。…明日バイトだから、月曜でもいい?」
「や、洗わんでええよ」
「外でも遊んじゃったし…」
「外で遊んだ、…て。子供か」
「ダンゴムシとか触ったの幼稚園ぶり!ありの行列追いかけるのも楽しかったし、あとは……」
止まらなくなった私のしょうもない話をいちいちリアクションしながら聞いてくれて、それは楽しそうやな、って笑ってくれる侑。
できることなら、このまま、ずっと話してたいな。
そんなことをぼんやりと思っていた自分に驚く。
それでも侑にも帰らないといけない場所はあるわけで。
10分くらい話したころ、じゃあ、と侑がドアを押し開けた。
「そろそろ帰るわ。…ジャージは」
「洗う」
「ほんならお願いするわ。ありがとな。……あ、」
一歩外に出た侑が、ふと振り返る。
どうしたの、と訊いたら、彼は嫌なら断ってもらって構わんのやけど、と前置きして、言った。
「明日、迎えに行こか?」
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作者名:えのきのこ | 作成日時:2019年5月21日 19時