お手伝い ページ42
「お邪魔しました」
「おん、差し入れありがとうな」
「いえいえ。また来ますね！」
北さんに向かってぺこりと頭を下げたAが、くるりと振り返って走ってくる。
結局練習が終わるまで俺のジャージを羽織ったまま遊んでいた彼女は、きらきらと笑顔を輝かせながら俺に飛びついてきた。
「…ほんとに付き合ってないの？」
「おん」
「全然！！」
そんな俺らを見て怪訝そうな顔をする角名。
いや、ほんまに付き合ってへんねん。
おかしいやろ、俺もおかしいと思うわ。
元気に返事をした彼女が、ぐいぐいと俺の腕を引く。
１日散々暴れまわった癖に、その髪はまだいい匂いがした。
「ねぇ、えー…と、及川さん」
「Aでいいよ、角名くん」
「マネージャーとか興味ない？」
「…は？！」
角名の言葉に、誰よりも俺が驚いた。
Aはぽかんとした顔で角名を見返す。
角名はぴくりとも表情を変えずに、淡々と言った。
「いや、土日とか結構手一杯なんだよね。自分達でやるのには限界がある、っていうか」
「あー、確かに。スコア表とか書くのも自分らじゃ大変やしな」
隣を歩く治もやんわり同意する。
答えを求めてAに視線を向ければ、彼女は予想以上にきっぱりと言った。
「ごめんね、マネージャーはできないや」
「そっか」
角名も、断られた割にはダメージを受けていない様子。
いや、どちらかといえば俺の方がダメージ受けてる。
ほんまにやってくれればええのに、って心のどこかで思っていたから。
「バイトもあるし、部費も私のバイト代から出すのは正直きつい」
「…あぁ」
彼女の言葉を聞いて、なるほど納得した。
そういえばAは一人暮らしやったな。
確かにそれは現実的やないな。
「でも、今日はすごく楽しかった」
だから、
「土日、暇なときに“お手伝い”として、でよければやらせてもらいたいなぁ、って」
どうかな？って彼女が首を傾げた。
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作者名：えのきのこ | 作成日時：2019年5月21日 19時
