角名 ページ40
相変わらずむかつくくらい完璧なトス。
レフト側にちょうどいい高さで上がったボールを、次の瞬間、及川Aの細い手が捉えた。
思いっきり叩きつけられたボールは、2、3度ぽんぽんと跳ねて転がる。
「うわぁぁぁ!!めっちゃ上手いね、侑!!」
「…いや、それは、嬉しいけど、」
「…ん?」
反応の薄い侑に驚いたのか、彼女が首を傾げて侑の顔を覗き込む。
目を丸くした侑が、乱れた髪を手で解く彼女を見て叫んだ。
「お前がバレーできるなんて聞いてへん!!!」
「だって聞かれてないもん」
あーあ疲れちゃった、とボールを拾ってコートを出てくる彼女。
その細い腕でよくもまぁあんなスパイクを。
ちょうどその時、ピピ、と5分にセットされていたタイマーが鳴った。
及川Aは侑に向かって親指を立てると、裸足でぺたぺたと体育館を出ていってしまう。
どんだけ自由人なの。
呆れた。
…ていうか、あんなキャラだったっけ?
俺の知ってる及川Aは、もっとちゃんと女子で、しっかりした人で……。
どっちが、本当の及川Aなんだろう。
「角名!」
治に呼ばれて、はっとしてコートに入る。
「なんや、考え事か?…及川さんのこと?」
「…違うし」
ニヤニヤしながら背中を叩いてくる治。
あぁさすが、侑の兄弟だなぁと思った。
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作者名:えのきのこ | 作成日時:2019年5月21日 19時