死にぞこないの死にたがり【宮侑】 (ページ32)

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自覚ページ32

風呂借りるで、って侑が部屋を出てから、ゆらゆらと立ち上がった。

まだ、鼓動が鎮まらない。

胸に手を当てると、とくんとくんと微かに掌に伝わる感覚。

私、生きてるんだなぁ、って今更感じた。

ふらふらしながらキッチンに向かい、冷凍庫を開ける。たしかここに、凍らせておいた米があったと思う。

…あぁ、あったあった。

昨日の朝炊いて凍らせたから、多分まだ美味しい、はず。

電子レンジに入れてピ、とボタンを押す。

温め終えたほかほかのそれを皿にあけ、梅干しを中に入れてきゅっきゅっと握る。

いつもより、丁寧に、丁寧に。

５分くらいかかって、大きなおにぎりが２つできた。

……食べてくれるかな、侑。

紺色の巾着袋に、保冷剤と一緒にそっと入れた。

電子レンジに反射して映った自分の顔がにやけているのに気が付いて、慌てて引き締める。

なんなの、私。

ほんとに、おかしい。

『お前は俺のバレー見るために生きればええ』

そう言った侑の優しい顔を思い出すと、胸に暖かいものが広がっていく。

「あつむの、バレー、見るため…」

小さな声で、風呂場の侑に聞こえないようにぼそりと呟いた。

ぶわっと体温が上がったような気がする。

いや、これは気のせい。

熱のせい。

でも、

そんなこと、初めて言われた。

「ずるい……」

布団を抱えて床にごろごろと転がる。

…これじゃまるで私、侑が好きみたい。