甘え ページ27
あのものすごい量の野菜炒めは、頑張って全部食べた。
お腹いっぱい。
こんなに食べたのは久し振り。
洗い物するよ、って言ったら病人は寝とけって言われた。
ありがとう、って彼に全部任せて、布団を敷いて寝転んだ。
キッチンに立つ侑の背中が頼もしい。
……あ、なんかぼんやりしてきた。
熱、あるかも。あつい。
「あつむ……」
「なんや」
すごく小さな声しか出なかったのに、どないしたん、って近付いてくる。
心配そうな顔をしてくれるのが嬉しくて、ふふ、て笑ったらほんまに大丈夫か？って本気で心配された。
「なんでもない、」
「なんやねん」
ふは、って笑う侑。
友達に「宮くんめっちゃモテるんやで」って聞いたけど、確かに、これはモテるよね。
「なんもないなら行くで」
キッチンに戻ろうとした侑の腕を、がっしり掴む。
「いや、待って」
「…ん？」
枕元にしゃがんだ侑の腕を、思い切り引っ張った。
完全に気を抜いていたその大きな身体は、いとも簡単に崩れて、私の上に落ちてきた。
「うわ！！ちょっ、！！」
侑の大きな声が耳元で聞こえて、反射的に目を瞑って。
近くに侑を感じてゆっくり目を開けたら、目の前に彼の顔があった。
……床ドン、ってやつ。
「危な、潰すとこやった…」
「いいよ、潰して」
死ねるかも、って言ってみる。
侑は呆れたような顔をして、あほか、と言った。
「死ねるわけないやろ、痛いだけや」
「じゃあ、……やってみる？」
「は？」
多分熱でおかしくなっていたんだと思う。
私はそのまま侑の首に腕を回して、ぐ、と引き寄せた。
がくん、と侑の腕の力が抜けて、彼の体重がどっしり私のお腹にかかる。
「う、」
私、男子高校生舐めてたなぁ。
めちゃくちゃ重い。
「あほちゃう？！なにしてんねん！ほんまに潰れるで！？」
「侑…何キロ…」
「73や」
「重ぉ……」
離れようとする侑に、またひっつく。
「…もうちょっと、このままでいて」
「…ん」
嫌がられるかと思ったら、侑は私の横に寝転がって、優しい声で言った。
「俺はずっとここに居るから、安心し」
「…うん」
あぁ、やばい。
＿＿おかしくなりそう。
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作者名：えのきのこ | 作成日時：2019年5月21日 19時
