死にぞこないの死にたがり【宮侑】 (ページ24)

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夢の話ページ24

夢を、見ていた。

懐かしい宮城の家。

オレンジ色の光に包まれたリビングのテーブルに、家族４人で座る夕方。

私の向かい側に座ったお母さんが、にこにこ顔で徹に話しかける。

「徹はすごいねぇ、お母さん嬉しい」

そんなお母さんに相槌をうったお父さんが、笑って目を細めた。

「これからが楽しみだなぁ」

「俺頑張るから、また見に来てね！」

ふふ、と嬉しそうに笑うのは、隣に座った中学生の徹。

小さな台の上に置かれた、金色のトロフィー。

賞状に書かれた“北川第一”“優勝”の文字。

…あぁ、そうだ、確かこの日は徹がバレーの大会で優勝した日。

私につきまとって離れない記憶。

「じゃあ明日は徹の好きなもの作っちゃおっか！なにがいい？」

「んーとね、エビフライ！」

「お、いいなそれ」

…私はエビフライ、好きじゃない。

そんな小さな私の呟きはスルーされてしまって。

そうしましょうか、ってお母さんが笑う。

お母さんとお父さんはずっと徹に話しかけてる。

話題はずっと徹のこと。

私になんて、見向きもしない。

仕方ないとは、思う。

徹はすごい。

バレーも上手くて、勉強もできて、明るくて、いつも友達に囲まれて。

お母さんとお父さんは、徹が大好き。

私はなにも出来ない。

部活は先輩とうまくいかなくて、辛くてやめてしまった。

勉強もそこまで出来ない。めちゃくちゃ悪いわけでもなく、でも良くもなくて。

虐待とか、そんなんじゃない。

嫌われてる、と言うよりは、無関心、って感じ。

風邪を引いたら病院に連れていってくれる。

塾に行きたい、って行ったら行かせてくれる。

でも多分、そこに愛は無かった。

産んじゃったから、とりあえず育てよう、みたいな。