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保健室 ページ21

屋上の扉の鍵は、屋上からなら開けられるようになっている。

鍵を持っていなくて閉めることは出来ないので怪しまれるだろうが、先生の閉め忘れだということで片付けてもらえるだろう。


俺はびしょびしょのAを階段を使って上手く背負い直して、保健室に向かった。


「なにしとん?!侑くんまで!先生が探しとったで!?」


ドアを開けるや否や、保健室の先生が、Aと俺を見て慌てて駆け寄ってくる。

俺はAを先生に預けると、適当な椅子に腰を下ろした。

先生が俺にバスタオルを投げつける。乱暴やなぁ。


「トイレ行ったら外のベンチに居るのが見えたんで、連れてきました」

「あほ!!先生に言ってや」

「…すんません」


よかった。嘘はバレてない。


バスタオルでごしごしと拭かれてベッドに横たえられたAは、目を覚ますことなくすやすやと寝息をたてていた。


「どうしよう、…及川さん、うちに帰したいんやけど…」

「けど?」


先生がこちらをちらりと見て口ごもる。


あぁ、個人情報だからか。

一人暮らし、とか、安易に言えないんや。


「こいつが一人暮らしなの、知ってますよ、俺」


結構前に、聞いた覚えがある。


先生は驚いたように目を見開いて、それから、そうなの、と頷いた。


「落ち着くまでここに居てもらうわ。…侑くんも、帰ったほうがええね。風邪ひく」

「…なら、俺、Aと一緒に帰ります」

「……侑くんが?」


呆れ顔の先生が、顔をしかめて俺を見た。


俺って、そんな信用ないんか?

別に下心とかそんなもんは微塵もないで。


…ただちょっと、こいつと居たいだけやねん。

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作者名:えのきのこ | 作成日時:2019年5月21日 19時

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