【妖怪ウォッチ】笑・桜色のあの子

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一日の授業が終わり、帰りの会も終わり、生徒のみんなが帰り始めた頃に、その女の子はやってきた。



昇降口で、女の子と、そのお母さんらしい人と挨拶する。



「では、校長室へご案内します」



担任の先生がそう言い、私は持っていた来客用のスリッパを二人の前に置く。



「あら、ありがとう」


眼鏡をかけ、キチッとスーツを着こなした、女の子のお母さんが言う。
なんだか真面目でしっかりしてそうなお母さんだな…。


女の子の方を見ると、緊張しているのか、口をつぐんで床の一点を見つめていた。



廊下に出たところで、階段から誰かが降りてきた。



「あ、ケータ君…」



「お、ちょうど良かった。ケータ！」



私がボソッとつぶやくと、担任の先生がケータ君を呼び止める。



「は、はい？」



少し驚いて立ち止まるケータ君に、担任の先生が言う。



「この子、来週からうちのクラスに来る転校生なんだ」


続いて女の子の方を向き、


「彼は、君と同じクラスの生徒だよ」



と優しく教えてあげている。



状況を察したらしいケータ君が、女の子の方を向き、




「オレ、天野ケータっていうんだ。よろしくね！」


と優しく笑いかける。



しかし女の子は、ケータ君の方を見ようともせず、すたすたと廊下を歩いていってしまう。


「…すみません。少し緊張しているようで…」


真面目そうなお母さんがそう言って申しわけなさそうに頭を下げた。



「あ、いや、気にしないで下さい！」


何でもなさそうに言ったケータ君は、そのまま一人で帰って行った。

昇降口を出て歩き出す彼に、後ろから小さく手を振ると、普通に笑ってくれた。

良かった。すごく傷ついてたりとかは…してないっぽい。



校長室で面談が始まってからも、女の子はほとんど話すことなく、何か思い詰めたような顔をしていた。



女の子の名前は
姪原(めいはら) 華(はな)ちゃんというらしい。


聞くところによると、お父さんの仕事は政府関係で、お母さんは秘書のお仕事をしているらしい。


所謂お金持ち。お嬢様。すごいなあ。



「政府関係と言っても、国会議員とかではありませんし…一番下っ端ですのよ」


お母さんが笑ってそう話す間も、華ちゃんはずっと黙ったまま。表情もピクリとも変わらない。

きっと緊張してるんだよね。


私は転校とかしたことないから分からないけど、きっと緊張するし、怖いこともあるんだと思う。


華ちゃんに一日でも早くクラスの子と仲良くなってもらうためにも、私も頑張らなきゃ。

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