【妖怪ウォッチ】笑・桜色のあの子

月より団子 ページ29

9月に入って少しすると、夏休みの間の暑さが嘘のように和らぎ、


秋を迎えようとしているかのように涼しい風が吹くようになった。



小学校からの帰り道、ごはんの食材を買うためにお店に向かった。



赤信号に立ち止まり、ふと空を見上げると、白っぽく綺麗な月が優しい光を放っていた。




「綺麗…」



そういえば、9月といえばお月見の季節だよね。
食材調達するついでに、月見団子でも買っていこうかな？



今日はまだ満月ではないけれど、なんとなく月見しながらお団子が食べたくなってしまった。




お店に入り、カゴの中に買うものを入れていく。



豚肉、キャベツ、パン粉…
今日の晩ご飯はとんかつだ。




最後に和菓子が並ぶ棚の方へ行き、月見団子を探すが、どうもそれっぽいものが見つからない。



3色団子もみたらし団子も、月見団子とはちょっと違うもんなあ…。



あきらめかけたとき、ふと思いついた。


…自分で作ってしまえばいいのでは？


と。



持っていたスマホでお団子の材料を調べる。




レシピは至ってシンプルだし、明日は日曜日。ゆっくり作ってお月見ができる。よし！




スマホに表示された材料を素早く手帳にメモすると、それを見つつ食材を探した。



…歩きスマホはよくないもんね。




団子粉、お砂糖。材料はこれだけ。



お会計を終え、例の紺色のエコバッグに食材をつめてお店の外に出る。


さあ帰ろう。




我が家、あんのん団地に向かって歩いていく。
すると、お店を離れて少ししたところで後ろから誰かに話しかけられた。




「おい、そこの三つ編みピンク」


「みつあみピンク？」



誰のことかと振り返ると、



「え？ふぶき姫ちゃん？」



暗くてよく見えないが、シルエットは彼女っぽい。ただ、雰囲気がちょっと違うような…。




「…ふぶき姫？…誰のことじゃ」




「あ、ごめん…。えっと…あなたは…」



話しながらスマホを取り出し、画面の明かりで彼女の姿をとらえた。




紫色の髪の毛、それを留める黒いかみどめと着物。心なしか禍々しいオーラを感じるような。




「私は百鬼姫じゃ」



「百鬼姫…ちゃん？えっと、『三つ編みピンク』っていうのは、私のことかな？」



「お前以外に誰がおるのじゃ」



「ご、ごめんごめん、そうだよね」



確かに三つ編みといえば三つ編みだけど！
あのカーディガンも着てるけど！というか桜色ねこれ…。




悪口なのかなんなのか、初対面で私を「三つ編みピンク」呼ばわりしたこの子は、もしかしなくてもきっと妖怪さんだ。

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