心の睨めっこ(2)

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誠「こんばんは。」

奈「長谷部選手じゃないですか！いらっしゃいませ。」






そっか。

奈央さん、サッカー好きだって言ってたな。
だから当然、長谷部さんの事も知ってるか。







奈「まさか、長谷部選手に来て頂けるなんて。」

誠「ウッチーがここのご飯が美味しいと。」

奈「そんなことないですよ。どこにでもある味付けです。」







流石、長谷部さん。

初対面の挨拶は完璧だよね。
愛想も良いし、気の利いた言葉もポンポン出てくるし。




問題は、もう一人の方。







「こんばんは。」

奈「………」







お、意外と普通だ。


なんて俺は思ったが、奈央さんは無反応。
というよりは、驚いた顔をして固まってると言った方が正しい気がする。







『奈央さん？』

奈「あ、ごめんなさい。ちょっとビックリして。まさか、内田君が女の子を連れてくるなんて思わなかったから。」

「…すみません。」

奈「違うの。ごめんなさい、気を悪くしないで？初めまして。オーナーの奈央です。」

「初めまして。Aです。カラスには、たまにお世話になってます。」

奈「カラス？」

『奈央さん、そこ気にしないで。』

「痛っ。」







ペシッと軽く頭をしばけば、ギロッと睨まれた。



カラスと呼ばれるのはもう慣れた。

変に内田さんとか今更呼ばれるのも何か気持ち悪いし、こいつが俺のことを名前で呼ぶなんて絶対にあり得ないだろうし。




てゆうか、たまにお世話ってなんだよ。

俺、結構お世話してやってると思うぞ？



うちに泊まりに来るときは、毎回駅まで送り迎えしてやってるし、シャルケのホームでする試合のチケットも見に来るってなったら用意してやってるし、寝て１時間後に泣き出した時は頭撫でてやってるし、眠れないって電話が来るときは付き合ってやってるし。

俺にしては結構、頑張って人の世話をしてると思うんだけど。







「なんか、うちの店に雰囲気が似てる気がする。」

誠「俺も思った。いいとこ見つけたな、ウッチー。」

『まぁね。』

奈「いつものでいいのかな？」

『うん。お願いします。』

奈「かしこまりました。」








山田を真ん中にしてカウンターに座った。


長谷部さんと山田は、メニューを見て何やら楽しそうに話しているが、そこに加わろうという気には当然ならず、日本の友達から来たメールに返信をしていた。





だから、気づかなかった。
奈央さんが動揺していた事に。

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