心の睨めっこ(11)

番外編〜atsuto&ema〜 ページ44

『……なぁ。』

「何よ。」







うちの嫁は、朝からすっごい不機嫌。

正確に言うと、昨日の夜から。








『…仕方ないじゃん？』

「そうですね。」

『…日にちは指定されたし？』

「そうですね。」

『…俺はちゃんと、A居ないよ？って、言ったし？』

「そうですね。」

『……そうですね、禁止。』

「さようでございますか！」








いや、本当にさ、仕方ないじゃん？

今日って決めたのは、俺じゃないもん。



ちゃんと、Aが仕事で今日だと来れないって伝えたけど、Aが居なくても良いって言ったの向こうだし。

それ言われちゃうと、わかったってしか言えないじゃん？









『…店まで送ろうか？』

「結構です。待ち合わせの時間に遅れるんじゃないんですか？」

『……敬語やめてもらっていいっすか…。』

「…ムカつく。」









遂にはっきりと言われましたー。


なんとなく、こうなるだろうなって思ったから、俺は別の日にって提案したんだよ。

でもさ、この日がいいって言われちゃうとさ…。









「オシャレしちゃってさ、」







デニムにAがいつかくれたプレゼントのパーカー着ただけなんだけど。

あと、ちょっと伸び放題になってきてる髪についた寝癖を直しただけなんだけど。








「私がここに行きたいって言っても、いってら〜って送り出す癖にさ、」








いや、それは、言われるタイミングが悪っていうか…。

しかも、人気スポットで並ぶって場所ばっかりだし…。








「プロポーズされたと思ったら熱愛記事が出て。結婚して式も終わったと思ったら、不倫ですか！！」

『だからぁー！仕方ないだろ！？お前もそれで納得したじゃねぇか！』

「うるさいなぁ！…私だって行きたかっただけですぅー。エマも酷いよね。篤人だけでもいい、なんて言っちゃうんだから。」







そう、今日はエマとデート。


もうすぐシーズンオフ前に差し掛かるから忙しくなるし、俺は日本に帰国するから、11月中に1度会おうってなった。

俺のオフとAの休みが合わなくて、とりあえず、どちらかの休みを伝えれば、エマの外出許可が出たのが俺のオフ日。


俺だけだと嫌がるかなって思ったけど、それでも良いって。

なんなら、行きたい場所も指定して来てくれた。









『じゃあ、いってくる。』

「気をつけてね。」








家を出る時には、機嫌は普通に戻っていた。

でも少しだけ、寂しそうだった。

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