心の睨めっこ

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楽しみで仕方なかったはずの、念願の日本旅行。

でも既にちょっとだけ、帰りたい気持ちが出てる。




意を決してもう一度声をかけてみようかとも思うけれど、どの人に声をかければ教えてくれそうか、それすらもわからない。



端っこで、自分の足元に視線を落とすことしかできなかった。








「いっ！……あ。」








突然、誰かに頭を鷲掴みにされた。



人違いで掴まれたのかと思いながら恐る恐る顔を上げてみると、鷲掴みされたのは私であっているようだ。









「な、」

『黙って付いて来い。』









帽子を目深に被り、私の「何で？」の疑問に被すように言葉を発すると、クルッと方向転換して歩き出す。




今最も頼れる日本人は、間違いなくこいつだ。



おとなしくキャリーを引きながら、アイツの後を追う。


アイツはというと、足早に何処かに向かいながら、携帯で誰かに電話し始めた。









『あぁ、見つけた。駐車場集合で。』








誰かと一緒に来たの？

もしかして、マコちゃんとか？




聞こうにも、話しかけるなオーラが出てる気がして、黙って後を付いていく。



付いていくがままに連れてこられたのは、空港に隣接されている駐車場。









麻「Aちゃん！よかった〜、すれ違いにならなくて。」

「吉田さん。」

麻「ウッチー、よく見つけれたね。どこに居たの？」

『改札前。』

麻「うわっ、ギリギリじゃん！」








真っ黒な車の前には、吉田さんが居た。








麻「長谷部さんから連絡あってね。仕事が押してるから、迎えに行ってくれないかって。飛行機の時間聞いて、ギリギリだなって思ってたら東京駅だって言うからさ。余裕だなって思ってたらウッチーが、Aちゃん初めて日本に来るのに電車の乗り方わかるのかって言い出して。かっ飛ばして、空港まで来たんだ。間に合ってよかった〜。」









どうやら、この真っ黒の車は鳥の巣ので、吉田さんが何故こうなってるのかを説明してくれた。



まさか、日本で会うだなんて思わなかった。

まさか、迎えに来てもらう事になるなんて。









麻「ウッチーなんて、長谷部さんの連絡無視だよ？」

『休みの日にうるさいんだよ、あの人。』









とか言いつつも、迎えに来てくれた事には感謝しようと思う。


私からキャリーを奪い、車に乗せた鳥の巣は、『乗れ。』と言い、乗り込むなり出発した。

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