【ONEPIECE】LORELEI in the MARINE【コビー】 (ページ2)

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人影ページ2

少女が居た。
月光に照らされた銀雪のような髪を靡かせ、同じくらい白い肌を、柔らかい衣装で包んでいる。歩みは酷く重く、然れどその足取りは、地面を味わうように、しっかりとしたものであった。

｢綺麗だ……｣

兵の誰かが呟いた。自分だったかもしれない。そこにいる全ての者の視線を奪うほど、その姿は神秘的であった。まるで、天使とやらが舞い降りた姿にも思われた。
否、場違いだったのであろう。
地獄のような戦場に、突如現れた、白銀の少女。顔立ちこそ見えないが、病弱よりも、恐ろしさを感じるほどの真白な人影。審判を下しにきた、天の使いか。そうだとしても、おかしくはない程の異質さだった。
全ての視線が、今は彼女のもの。
怒号も、銃声も、剣戟の声も、火の咆哮も、風の号哭も止んでいた。
時が、世界が、止まったかのようだった。

彼女の背後に佇む、海賊たちでさえも、その姿を捉え、戦気を失ったように静まっていた。聞こえるのは、彼女の、地を踏みしめる擦れた音のみ。
今思えば、これ以上とない好機だっただろう。彼女1人を犠牲にしてでも、この時ならば、多数の人質を救うことが出来る。彼女の後ろに立つ海賊たちを、何弾かの鉛玉だけで、抑えつけることなど容易であっただろう。

しかし、動けないのは、こちらも同じであった。
吸い込むように、視線を受ける少女の面立ちは、その距離十数メートルとなった所でも、尚はっきりとしない。
ふいに、足取りが止まった。
ゆっくりと顔がこちらを向いた。
角膜を揺れる波は穏やかで、血潮よりも尚紅い瞳が、陽の光を返さずとも、爛々と輝いていた。
緩慢な動きで、少女が両腕を、自身の胸へと当てる。手には何もなく、ただ梢のような腕を上げていた。スカートがはためく。少女の肺の動きさえも、耳に届いてきた。