3rd track ページ5
「そういえば、席、後ろだったんだ」
「そうそう。……ここいいよな、窓際で誰も来ねぇし」
教室に戻ってきて、窓辺の席に座る。椅子にもたれかかりながら、ふぁ、とあくびを漏らす彼。猫のようだと、安直に思う。柔らかそうな髪も、あくまでマイペースなその姿も。
「お兄さんが居るって言ってたけど」
「兄ちゃん?居る居る。3兄弟でさ、俺は2番目。本当すげぇ人なんだよ、兄ちゃん」
キラキラと目を輝かせ、彼は語る。弟は?と聞くと、あいつはなぁ、と眉根を寄せた。嫌悪感は感じるが、心から嫌っている、という色は見えない。きっと本当は仲がいいのだろう、と心の中で思った。
「その兄ちゃんがさ、俺をチームに入れてくれて」
「チーム?」
「ああ、兄ちゃんが作ったチーム。弟と一緒ってのがちょっと気に食わないけど、兄ちゃんと一緒に活動できるんだ。もう俺、すげー嬉しくてさ」
拳を握りしめながら、彼は目を細める。つい最近のことなのだろう。その頬は興奮から紅潮していた。
「チームって、どんな?」
「テリトリーバトルのチーム。兄ちゃんは【The Dirty Dawg】って言うチームの元メンバーだったんだけどさ、そのチームが分裂して、新しく作ることになって、その新しいチームのメンバーに、俺と三郎……弟が入ったんだ」
兄ちゃんから課題を課せられたときも、俺はすぐにやってのけた。彼は語る。お兄さんがどれだけ素晴らしい人物か。私は全く退屈しなかった。彼の話を聞くのはとても面白かったし、私にも兄のように慕う人物がいたからだ。
テリトリーバトルがどのようなものかも説明してくれた。私はここらに来たばかりだったので、事情をよく知らない。中王区のこと、ヒプノシスマイクという存在。お兄さんと犬猿の仲の人と、私の髪色が似ていたから、私のことを不思議に思わなかった、などとも教えてくれた。
*
「今こそ、女の方が強いって言われるけどさ、やっぱり敵わないこともあるらしいし、何かあったらまた呼んでくれな」
その髪とか目とか、実際狙われやすいだろ?
彼は言った。ほんの少し、胸が痛む。
「ありがとう。意外と大丈夫なんだよ?……でも、その時はお願いね」
笑顔を見せると、彼は満足そうに笑った。
久々に、優しい同年代に会えた気がする。
チャイムが鳴った。二郎くんが苦手な先生の授業だった。案の定チクチクとした声が彼に向けられるが、彼は何の気も無しに、頬杖をついて笑っていた。
306人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆゆ - あと銃兎さんと独歩さん推しなのが一緒で嬉しかったです! (2019年5月26日 14時) (レス) id: b6b1790fec (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 初コメ失礼します!銃兎さん登場回数多めですね笑銃兎さん最推しなのでめっちゃ嬉しいです!お話も読みやすかったです!また来ますね! (2019年5月26日 14時) (レス) id: b6b1790fec (このIDを非表示/違反報告)
エレン(プロフ) - 名無しさん» 申し訳ありません。修正箇所を見落としているのですが、もしよろしければ場所を教えて頂けないでしょうか (2018年5月23日 19時) (レス) id: a16f57eab6 (このIDを非表示/違反報告)
エレン(プロフ) - 夢花 ゆめいろ星(スター)の夢花さん» ありがとうございます!楽しんでいただけたら嬉しいです!いってらっしゃいませ〜! (2018年5月23日 19時) (レス) id: a16f57eab6 (このIDを非表示/違反報告)
エレン(プロフ) - 名無しさん» あららら、ご指摘ありがとうございます! (2018年5月23日 19時) (レス) id: a16f57eab6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:エレン | 作成日時:2018年2月9日 7時