177 ページ35
Aside
｢どうして...？｣
その質問のあと、佐久間はしばらく口を開こうとしなかった。
でももう一度尋ねる気になれなかったのは
佐久間のその目がかすかに潤んでいたから。
佐｢...難しい手術なんでしょ？｣
ようやく聞こえたその声は酷く震えていた。
佐｢成功する可能性も低い、成功しても障害が残るかもしれない...じゃあ手術を受けるメリットってなに？｣
佐｢手術をうけて早く死んでしまうぐらいなら...不自由な体で長生きするぐらいなら...この体のままで残りの2ヶ月を全力で楽しみたいよ、俺は。｣
つらかった。
佐久間の言っていることを完全に否定することが出来ないから。
綺麗な体のままで、美しい思い出のままで短い人生を終える。
それもひとつの選択肢だと思った。
だけど、それは本人だけの意思。
私たちが望んでいるのは違う。
｢...佐久間。｣
佐｢....ん？｣
｢私は....私たちは、2ヶ月じゃ足りないよ｣
その言葉に傷ついた顔をする佐久間。
間違えてしまったのだろうか。
佐久間が唇を噛み締めるのを見て、大きな不安がおしよせた。
佐｢...俺だって足りないって思ってるよ。でもさぁ...もうどうしようもないじゃんっ...！｣
いつぶりだろうか。
佐久間の涙を見たのは。
いつぶりだろうか。
彼が弱い姿をさらけ出したのは。
佐｢俺だって元気になってみんなとずっと一緒にいたいよ。でも、怖いんだよ...もし失敗してしまったら、みんなと笑えたはずの2ヶ月も消えちゃうんだって...｣
溢れ出す涙を、佐久間は拭おうとはしなかった。
なにか言葉をかけてあげなきゃ。
なにか、佐久間を安心させてあげられるような言葉を。
そう思ってはいても、私は何も言うことが出来なかった。
きっと、怖くなってしまったんだ。
佐久間の言葉を聞いて、私の心まで折れてしまいそうだった。
約束された2ヶ月。
不確定な永遠。
私はそれを選ぶことができなかった。
静かな病室には佐久間のすすり泣く声だけが響いていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 592人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なあや。(プロフ) - りなぷのれんくんさん» 読んでくださりありがとうございます！私の書いた物語で涙していただけるなんて...本当に嬉しいです...！本当にありがとうございました！ (2021年3月7日 7時) (
レス) id: a53474b7ec (このIDを非表示/違反報告)
りなぷのれんくん(プロフ) - 号泣しました。まじでお話の作り方がうますぎて、なんていえばいいか分からないんですけど、めちゃくちゃいい話しすぎました、、、 (2021年2月13日 7時) (レス) id: 4c35f66251 (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - なあや。さん» ありがとうございます！ほぼ同じ台詞を使ったりしようと思っていますので、もしよければ、『引きこもりの彼』という作品にてご確認いただけたらな、と思います。本当にありがとうございました！ (2020年10月25日 8時) (レス) id: a0b82fa00b (このIDを非表示/違反報告)
なあや。(プロフ) - momoさん» コメントありがとうございます。真似というのは小説内で同じようなシチュエーションを使うという解釈で間違いないでしょうか？でしたら名前出していただけるなら全然大丈夫です！ (2020年10月24日 2時) (レス) id: a53474b7ec (このIDを非表示/違反報告)
momo(プロフ) - 本当はチャットではないんですけど、１番最後の、佐久間の事故に遭うところ辺りを、お名前を出させていただくので、真似させていただけませんか？ (2020年10月23日 20時) (レス) id: a0b82fa00b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なあや。
| 作成日時：2020年8月27日 8時
