7 ページ7
｢...彼女？｣
絞り出した声は震えていた。
渡｢...うん、同じクラスの子｣
なんで？さっきのキスはなんだったの？
｢...そっか。お幸せにね。｣
渡｢...うん、お前もな。｣
ほんと言いたくない言葉だってすらすら出てくる。
なんで私はこんなにも冷静なのだろうか。
重たい沈黙が流れる。
それを破ったのは翔太。
渡｢...なあ｣
私にもし、相手の感情を読み取る能力があれば
渡｢めちゃくちゃなこと言ってるのはわかってるんだけど｣
理解出来たのかもしれない。
渡｢...これで終わりにするから。｣
彼の行動の意味を。
渡｢...目閉じて｣
そう言ってもう一度重なる唇。
抵抗する暇なんてなかった。
否、するつもりなんてなかった。
私には蓮がいて、翔太にも彼女がいる。
それでも今は何も考えたくなかった。
後頭部と背中にまわされた手。
唇から伝わる熱が心地いい。
絡められる舌。苦しくなる呼吸。
どこで覚えたのかも分からない、大人なキスについていくのに必死だった。
そのあとのことなんて覚えていない。
どうやって部屋を出たのか。
私はいつの間にか家までの道のりを1人で歩いていた。
辺りはすっかり暗い。
こんな時間に1人で歩く女子高生。
その異様さに向けられる好奇の目を気にするほどの余裕なんてなかった。
人気のない道に出て立ち尽くす。
危ない、なんてどうでもいい。
...もう生きるのが辛かった。
｢...おい何やってんだよ。｣
肩を掴まれて振り返る。
｢...ふっか。｣
バイト終わりなのか、まだ制服を着ている彼。
深｢翔太は？って...｣
｢...は？お前泣いたの？｣
私の顔を見て驚いたように目を見開いた。
頬を触ると確かに濡れていた。
翔太とキスをしている時、頬に感じた温もり。
気のせいじゃなかったんだ。
深｢...何があった？｣
腰を屈めて目線を合わせる。
ふっかの優しい目に涙がこぼれる。
｢...ふっか。｣
深｢ん？｣
｢....全部....終わっちゃった....｣
1人のときは流れる気配もなかった涙が今になって溢れ出す。
全てを悟った様子のふっかは何も言わずに私を抱きしめた。
深｢...落ち着いた？｣
頷いて顔を上げる。
深｢ははっ、ひっでえ顔。笑｣
｢ごめん、制服濡らしちゃった...｣
深｢んなの気にすんなって｣
どこまでも優しいふっか。
今はそんなふっかの優しさに甘えていたかった。
｢...ねえふっか｣
｢慰めてよ｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 826人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なあや。
| 作成日時：2020年5月24日 2時
