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目黒side
朝学校に行くと、机に伏せているAが目に入る。
でもいつもみたいにイヤホンはしていなくて、珍しいなぁと思いながら横を通り過ぎる。
近くを通っても全く反応しないA。
近くで顔を覗き込んでみると寝息を立てていた。
...やっぱり具合悪いのかな。
心配になりつつも起こすわけにもいかない。
大人しく席に着く。
荷物を横にかけると、視界の端にピンク色の何かがうつる。
目線を移せばそこには付箋が貼ってあった。
『飴ありがとう』
少し癖のあるきれいな字。
すぐにAの字だと気づいた。
なんも言っていないのに。
俺だって分かってるんだ。
そう思うと嬉しさが込上げて思わず口元が緩む。
なくさないようにといつも使っているノートに貼り直した。
1時間目の授業が始まる。
前から回ってきたプリントを振り返らずに後ろに渡す。
だが、なかなか手から離れないプリント。
振り返ってみればAはまだ寝ていた。
起こすのに抵抗はあったが
真面目なAは授業中に寝ることを好まないはず。
そっと肩を叩く。
ゆっくりと瞼が上がり、潤んだ目がこちらを見る。
そして目線は俺の手元に移る。
｢....あ、ごめん｣
慌てた様子で起き上がるA。
よく見えるようになった彼女の頬は火照っていた。
目｢いや、いいんだけどお前...｣
照れているわけじゃないというのはすぐ分かった。
きっと熱があるのだろう。
指摘しようとすると
一度あった目が不自然に逸らされる。
｢プリントありがと｣
俺の手から紙を抜きとると二度とこちらを見ようとはしなかった。
仕方なく前を向いて授業を受け始める。
たまにAの方を見るが、
体調不良を俺に隠そうと必死な様子だった。
昼休みを知らせるチャイムがなる。
するとすぐに立ち上がってどこかに行こうとするA。
そんなフラフラな状態で行くなんて無茶だろ...
目｢おい、どこ行くんだよ｣
慌てて腕を掴んで引き止める。
｢...友達と約束してて｣
目｢断れ、そんな状態じゃ無理だって...｣
｢大丈夫だから｣
目｢でも、｣
｢離して｣
いつもより低く冷たい声に怯んで
腕を掴む力を弱めてしまう。
その隙にAはどこかに走っていってしまった。
目｢...あいつまた｣
Aはまた弁当を置いていったようだった。
...友達なんて嘘なんだろうな。
そう思っても本人に聞けないのは
俺が小心者だから。
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作者名：なあや。
| 作成日時：2020年5月24日 2時
