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田中side
苦しそうにつぶやくAちゃんを見て胸が痛くなる。
こんないい子に、俺はめちゃくちゃ酷いことしたんだな。
田｢...ほんとに謝って済むことじゃないって分かってる｣
｢嫌われて当たり前だって思ってる｣
田｢けど俺、Aちゃんと仲良くなりたい｣
そう告げればまた静かに顔を上げたAちゃんと目が合う。
｢...私、怖い先輩は嫌いです｣
田｢...うん、だよね｣
分かってはいたけど、改めて言われるとなかなか辛いものがある。
傷ついた心を隠すようにそっと目を逸らした。
｢でも、優しい人は好きですよ｣
田｢...え？｣
｢先輩優しいですもんね？｣
なんて無邪気な笑顔を向けるAちゃん。
その顔を見て鼓動がはやくなった。
｢私、先輩のこと許しますよ｣
田｢...Aちゃんはいい子すぎるね｣
ありがとう、と小さく呟く。
その優しさに泣きそうになるが負けじと笑ってみせた。
田｢そう言えば、さっきのパンありがとうってなんの話？｣
｢あー、私お昼食べそこねちゃって...授業中だったんで取りに行けなくて、櫻井先生がわざわざパンを買ってきてくれたんです。｣
田｢そーなんだ、お昼のうちにお弁当持って行ってあげればよかったね〜｣
翔ちゃんの行動にちょっとモヤモヤする。
...まじでガキじゃん俺。
田｢ねえ、Aちゃん｣
｢...なんですか？？｣
田｢明日からもさ、お昼俺のとこ来て？｣
そう言うとAちゃんの表情が曇る。
田｢昨日みたいなことはしないから安心して。｣
｢その代わり、お弁当持って来て欲しい。｣
｢...それって、｣
田｢一緒にお昼食べよ？｣
Aちゃんがほっとしたように顔を緩ませた。
｢いいですよ｣
その言葉に俺もほっとする。
｢...先輩？｣
田｢ん？｣
｢...ちゃん付け、しなくてもいいですよ？｣
私後輩ですし...なんてちょっと緊張しながら言うAちゃんは可愛くて仕方ない。
田｢じゃあAって呼んじゃおうかなぁ｣
明るく言って見せればAちゃんは笑ってくれる。
その笑顔を見て心が温かくなる。
話してるうちにAのマンションに着く。
｢ほんとにありがとうございました｣
田｢俺が送りたかっただけだから、気にしないで｣
そう言っても深く頭を下げるAはやっぱりいい子なんだなって思う。
中に入っていくAの背中を見送ると感じる寂しさ。
...あー。
俺、久しぶりに本気で恋してるかもしれない。
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作者名：なあや。
| 作成日時：2020年5月24日 2時
